专利摘要:
患者の脳のレヴィー小体病(LBD)と関係がある疾患の処置のための薬剤および方法が提供される。好ましい薬剤としては、PLK2キナーゼの阻害剤が挙げられる。1つの態様では、本発明により、レヴィー小体病(LBD)を処置するための活性について薬剤をスクリーニングする方法が提供される。そのような疾患としては、パーキンソン病(PD)、びまん性レヴィー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレヴィー体変異体(LBV)、複合型のPDおよびアルツハイマー病(AD)、ならびに、多系統委縮症(MSA)として同定された症候群が挙げられる。
公开号:JP2011515072A
申请号:JP2010546937
申请日:2009-02-13
公开日:2011-05-19
发明作者:ジョン;ピー. アンダーソン,;ケリー イングリス,;アイリーン グリスウォルド−プレナー,;ジェイソン ゴールドステイン,;デイビッド シェロー,;タミー;ジェイ. チルコート,;グリクバル;エス. バシ,;ノルマンド;エル.;ジュニア フリゴン,
申请人:エラン ファーマ インターナショナル リミテッド;
IPC主号:C12Q1-48
专利说明:

[0001] 関連出願
この出願は、2008年2月13日に出願された米国特許出願第12/030,849号および2008年5月15日に出願された米国仮出願第61/053,632号(これらの全体の内容は、全ての目的のために、参考として本明細書に援用される)への優先権を主張する。]
背景技術

[0002] レヴィー小体病(LBD)は、ドーパミン作動系の変性、運動変化、認識機能障害、およびレヴィー小体(LB)の形成を特徴とする(非特許文献1)。LBDには、パーキンソン病、びまん性レヴィー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレヴィー体変異体(LBV)、複合型のパーキンソン病(PD)およびアルツハイマー病(AD)(combined Parkinson’s disease(PD)and Alzheimer’s disease(AD))、ならびに多系統委縮症(MSA)として同定された症候群が含まれる。レヴィー小体型認知症(DLB)は、LBDの専門用語の相違にうまく折り合いをつけるために考え出された用語である。LBを伴う障害は、老人個体群における運動性障害や認知鈍化の一般的な原因であり続けている(非特許文献2)。それらの発生率は増加し続けており、重大な公衆衛生的問題を発生しているが、現在までのところ、これらの障害について承認されている処置方法はない(非特許文献3)。LBDの原因については議論のあるところであり、そして様々な神経毒や遺伝的感受性因子を含む複数の要因が役割を果たしていると言われている。]
[0003] 近年、LBDの病因を理解したいという新たな望みが生じた。具体的には、いくつかの研究により、シナプスタンパク質であるα−シヌクレインが、PDの病因において中心的な役割を果たしていることが示された。その理由は:(1)このタンパク質がLB中に蓄積するため(非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6)、(2)α−シヌクレイン遺伝子の変異がパーキンソニズムの珍しい家族性形態とともに分離するため(非特許文献7;非特許文献8)、そして(3)トランスジェニックマウス(非特許文献9)およびDrosophila(非特許文献10)におけるα−シヌクレインの過剰発現が、PDのいくつかの病理学的側面を模倣しているためである。]
[0004] 多くの科学者らは、PDは、全身性シヌクレイン病において比較的後期に発症し、そして「パーキンソニズムは氷山の一角にすぎない」と考えている(Langston,Annals of Neurology(2006)59:591−596)。例えば、レヴィー小体は、交感神経節において、そして腸の筋層間神経叢において記載されている(Herzog E.,Dtch Z Nervenheilk(1928)107:75−80;Kupskyら、Neurology(1987)37:1253−1255)。様々な障害が、レヴィー小体の存在に関係している。例えば、レヴィー小体は、レム睡眠行動障害の患者の脳幹の中で見られている(Uchiyamaら、Neurology(1995)45:709−712)。嗅覚機能障害は、パーキンソニズムの発症のかなり前から、多くのPD患者において報告されている。偶発的レヴィー小体病(incidental Lewy body disease)の患者と典型的なPDの患者に由来する心臓組織の試験により、心筋のシヌクレイン陽性神経炎が明らかにされた(Iwanagaら、Neurology(1999)52:1269−1271)。食道、下部の腸、および膀胱の機能障害が、末梢自律神経系のPDと関係がある病状の初期の徴候であることもまた明らかである(Qualmanら、Gastroenterology(1984)87:848−856;Castellら、Neurogasdtroenterol Motil(2001)13:361−364;Hagueら、Acta Neuropathol(Berl)(1997)94:192−196)。したがって、脳および他の組織の中でのα−シヌクレインの蓄積が、ヒト、マウス、およびハエといった多様な種において、類似する形態学的および神経学的変化と関係があるという事実は、この分子がPDの発症に寄与していることを示唆している。]
先行技術

[0005] McKeithら、Clinical and pathological diagnosis of dementia with Lewy bodies(DLB):Report of theCDLB International Workshop,Neurology(1996)47:1113−24
Galaskoら、Clinical−neuropathological correlations in Alzheimer’s disease and related dementias.Arch.Neurol.(1994)51:888−95
Tannerら、Epidemiology of Parkinson’s disease and akinetic syndromes,Curr.Opin.Neurol.(2000)13:427−30
Spillantiniら、Nature(1997)388:839−40
Takedaら、J.Pathol.(1998)152.367−72
Wakabayashiら、Neurosci.Lett.(1997)239:45−8
Krugerら、Nature Gen.(1998)18:106−8
Polymeropoulosら、Science(1997)276:2045−7
Masliahら、Science(2000)287:1265−9
Feanyら、Nature(2000)404:394−8]
課題を解決するための手段

[0006] 1つの態様では、本発明により、レヴィー小体病(LBD)を処置するための活性について薬剤をスクリーニングする方法が提供される。そのような疾患としては、パーキンソン病(PD)、びまん性レヴィー小体病(DLBD)、アルツハイマー病のレヴィー体変異体(LBV)、複合型のPDおよびアルツハイマー病(AD)、ならびに、多系統委縮症(MSA)として同定された症候群が挙げられる。いくつかの方法により、表1A、B;C、表2、表11、または表12に示されるキナーゼの活性もしくは発現を調節する薬剤を同定すること、ならびに、その薬剤が、疾患の動物モデルにおいてLBDの処置に有用な活性を示すかどうかを決定することを含む。いくつかの方法では、調節は阻害である。いくつかの方法では、工程(a)には、その薬剤がキナーゼを阻害するかどうかを同定することが含まれる。いくつかの方法では、工程(a)は、キナーゼおよび/またはα−シヌクレインを発現する核酸で形質転換された細胞の中で行われる。いくつかの方法では、工程(a)はインビトロで行われる。いくつかの方法では、工程(b)は、LBD疾患のトランスジェニック動物モデルの中で行われ、トランスジェニック動物は、ヒトのα−シヌクレインを発現するトランスジーンを持ち得る。好ましくは、キナーゼは、APEG1、PLK2、CDC7L1、PRKG1、MAPK13、GAK、RHOK、ADRBK1、ADRBK2、GRK2L、GRK5、GRK6、GRK7、IKBKB、CKII、およびMETのうちの少なくとも1つであり、そして調節は阻害である。キナーゼがPLK2またはGRK6であり、調節が阻害であることがさらに好ましい。キナーゼがPLK2であることがさらに好ましい。好ましくは、いくつかの方法では、キナーゼがPRKG1、MAPK13、またはGAKであり、そして調節は活性化である。いくつかの態様では、工程(b)には、トランスジェニック動物を薬剤と接触させること、そしてその薬剤が、その薬剤で処置されていない対照のトランスジェニック動物と比較して、α−シヌクレインの沈着の形成を阻害するかどうかを決定することが含まれる。]
[0007] 別の態様では、本発明により、LBDの処置または予防をもたらす方法が提供される。この方法のいくつかの例には、この疾患に罹患しているか、またはこの疾患のリスクがある患者に対して、キナーゼの活性または発現を調節するために有効な薬剤の有効なレジュメを投与する工程が含まれる。キナーゼは、表1A、B、もしくはC、表2、表11、または表12に示されているもののうちの1つであり得る。好ましくは、薬剤は、キナーゼに対する抗体、キナーゼの発現を調節する亜鉛フィンガータンパク質、または、アンチセンスRNA、siRNA、リボザイム、またはキナーゼの核酸配列に相補的な配列を有しているRNAである。いくつかの方法では、調節は阻害であり、好ましくは、キナーゼは、以下の少なくとも1つである:APEG1、PLK2、CDC7L1、RHOK、ADRBK1、ADRBK2、GRK2L、GRK5、GRK6、GRK7、IKBKB、CKII、およびMET。さらに好ましくは、キナーゼは、PLK2またはGRK6である。さらに好ましくは、キナーゼはPLK2である。これらの方法のいくつかにおいては、キナーゼは、PRKG1、MAPK13、およびGAKの少なくとも1つであり、調節は活性化である。]
[0008] 1つの態様では、本発明により、PLK2活性を阻害する薬剤の治療有効量を投与することによる、パーキンソン病と診断された患者を処置する方法が提供される。1つの実施形態では、薬剤は、PLK1活性および/またはPLK3活性および/またはPLK4活性の阻害と比較して、PLK2活性を優先的に阻害する。この薬剤は、例えば、siRNAであり得る。1つの実施形態では、患者は、ガンと診断されていないかもしくはガンについて処置されていない、および/またはアルツハイマー病と診断されていないかもしくはアルツハイマー病について処置されていない。]
[0009] 関連する態様では、本発明により、シヌクレインのリン酸化が減少するように、細胞中でpolo様キナーゼ2(PLK2)の活性を低下させることによって哺乳動物細胞中でのα−シヌクレインのリン酸化を阻害するための方法が提供される。関連する態様では、本発明により、α−シヌクレインのリン酸化が減少するように、細胞を細胞中のPLK2活性を低下させる化合物と接触させることによる、哺乳動物細胞(例えば、神経細胞)中でのα−シヌクレインのリン酸化を阻害するための方法が提供される。例えば、薬剤は、PLK2遺伝子産物の発現を低下させ得る。]
[0010] 特定の実施形態では、薬剤は、PLK1活性、PLK2活性、またはPLK3活性の低下と比較して、PLK2活性を優先的に低下させる。特定の実施形態では、薬剤は、4000未満の分子量を持つ。1つの実施形態では、薬剤は合成化合物である。いくつかの実施形態では、薬剤は、PLK2RNA転写物の発現または翻訳を阻害するポリヌクレオチド(例えば、siRNA)である。1つの実施形態では、siRNAの二本鎖領域の一方の鎖はPLK2転写物に完全に相補的であるが、PLK1転写物またはPLK3転写物には相補的ではない。]
[0011] 別の態様では、本発明により、α−シヌクレインを発現する細胞を、その遺伝子に特異的に結合するキナーゼまたは亜鉛フィンガータンパク質をコードする遺伝子に相補的な配列を有している核酸でトランスフェクトすることによる、α−シヌクレインをリン酸化するキナーゼを同定する方法が提供される。トランスフェクトされた核酸または亜鉛フィンガータンパク質は、キナーゼの発現を阻害する。そしてその後、細胞中のリン酸化されたα−シヌクレインの量を、siRNAまたはsiRNAをコードする核酸でトランスフェクトされていない対照細胞と比較して測定することができる。この場合、リン酸化されたα−シヌクレインの減少により、このキナーゼがα−シヌクレインをリン酸化することの指標が提供されるであろう。いくつかの方法にはまた、核酸でトランスフェクトされていない対照細胞と比較して、細胞によって生産されたα−シヌクレインの量を測定する工程も含まれる。いくつかの方法では、核酸は、siRNAまたはsiRNAをコードするDNA分子である。]
[0012] 本発明により、α−シヌクレインを発現する哺乳動物細胞中でのα−シヌクレインのリン酸化を減少させる薬剤を同定する方法が提供される。この方法には、a)PLK2を発現する(および状況に応じてシヌクレインを発現する)細胞中でのPLK2の活性を低下させる、そしてb)PLK1を発現する細胞中でのPLK1の活性を低下させないか、またはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK1の活性を低下させる;ならびに/あるいは、c)PLK3を発現する細胞中でのPLK3の活性を低下させないか、またはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK3の活性を低下させる;ならびに/あるいは、d)PLK4を発現する細胞中でのPLK4の活性を低下させないか、またはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK4の活性を低下させる薬剤を選択する工程が含まれる。細胞は、α−シヌクレインを過剰発現する哺乳動物細胞であり得る。1つの実施形態では、薬剤は、a)PLK2を発現する細胞中でのPLK2の活性を低下させ;b)PLK1を発現する細胞中でのPLK1の活性を低下させないか、またはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK1の活性を低下させ;c)PLK3を発現する細胞中でのPLK3の活性を低下させないか、またはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK3の活性を低下させ;そして、d)PLK4を発現する細胞中でのPLK4の活性を低下させないか、またはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK4の活性を低下させる。さらなる工程においては、この方法には、選択された薬剤が、その疾患の動物モデルまたはその疾患の細胞モデルにおいてレヴィー小体病の処置に有用な活性を示すかどうかを決定する工程が含まれる。動物モデルにはトランスジェニック動物が含まれる。細胞モデルには、神経系統に由来する細胞(neuronally−derived cell)培養物と、α−シヌクレインを過剰発現する哺乳動物細胞が含まれる。アッセイすることができる活性としては、セリン−129でリン酸化された全α−シヌクレインの割合の低下、または細胞中のα−シヌクレインの凝集の減少が挙げられる。]
[0013] 他の態様では、本発明により、シンフィリンの活性または発現を調節する薬剤を同定すること、そしてその薬剤がその疾患の動物モデルにおいてLBDの処置に有用な活性を示すかどうかを決定することによる、レヴィー小体病(LBD)を処置するための活性について薬剤をスクリーニングする方法が提供される。]
[0014] 他の態様では、本発明により、Ser−129がリン酸化されたα−シヌクレインを生産するための方法が提供される。この方法は、α−シヌクレインをコードするプラスミドおよびPLK2をコードするプラスミドが細菌細胞の中に提供され、α−シヌクレインとPLK2とが生産されて、その結果、PLK2が細菌細胞の中でα−シヌクレインをリン酸化するように、これらのプラスミドが同時発現されるように細胞を培養すること、そして、細胞からリン酸化されたα−シヌクレインを単離することによる。]
図面の簡単な説明

[0015] 図1A〜Cは、様々な組み換え体キナーゼによるα−シヌクレインのリン酸化についてのインビトロでのリン酸化アッセイの結果を示す。図1Aは全α−シヌクレインを示し、図1Bは、α−シヌクレインのpser−129(ホスホ−セリン−129)のリン酸化を示し、そして図1Cは、α−シヌクレインのpser−87(ホスホ−セリン−87)のリン酸化を示す。
図1A〜Cは、様々な組み換え体キナーゼによるα−シヌクレインのリン酸化についてのインビトロでのリン酸化アッセイの結果を示す。図1Aは全α−シヌクレインを示し、図1Bは、α−シヌクレインのpser−129(ホスホ−セリン−129)のリン酸化を示し、そして図1Cは、α−シヌクレインのpser−87(ホスホ−セリン−87)のリン酸化を示す。
図1A〜Cは、様々な組み換え体キナーゼによるα−シヌクレインのリン酸化についてのインビトロでのリン酸化アッセイの結果を示す。図1Aは全α−シヌクレインを示し、図1Bは、α−シヌクレインのpser−129(ホスホ−セリン−129)のリン酸化を示し、そして図1Cは、α−シヌクレインのpser−87(ホスホ−セリン−87)のリン酸化を示す。
図1D〜Fは、GPCR−受容体キナーゼ(GRK)ファミリー由来のキナーゼおよびPLK2を含む、組み換え体キナーゼを用いた実験を示す。図1Dは、全α−シヌクレインを示し、図1Eは、α−シヌクレインのpser−129のリン酸化を示し、そして図1Fは、α−シヌクレインのpser−87のリン酸化を示す。
図1D〜Fは、GPCR−受容体キナーゼ(GRK)ファミリー由来のキナーゼおよびPLK2を含む、組み換え体キナーゼを用いた実験を示す。図1Dは、全α−シヌクレインを示し、図1Eは、α−シヌクレインのpser−129のリン酸化を示し、そして図1Fは、α−シヌクレインのpser−87のリン酸化を示す。
図1D〜Fは、GPCR−受容体キナーゼ(GRK)ファミリー由来のキナーゼおよびPLK2を含む、組み換え体キナーゼを用いた実験を示す。図1Dは、全α−シヌクレインを示し、図1Eは、α−シヌクレインのpser−129のリン酸化を示し、そして図1Fは、α−シヌクレインのpser−87のリン酸化を示す。
図2AおよびBは、様々なキナーゼについてのインビトロでのキナーゼ活性の結果を示す。図2Aは、全(AS)を示す。図2Bは、ホスホル−セリン129(phosphor−serine 129)を示す。
図3A〜Cは、様々なキナーゼについてのインビトロでのキナーゼ活性の結果を示す。図2Aは、全ASを示す。図3Bは、セリン129を示す。図3Cは、ホスホ−セリン87を示す。
図3A〜Cは、様々なキナーゼについてのインビトロでのキナーゼ活性の結果を示す。図2Aは、全ASを示す。図3Bは、セリン129を示す。図3Cは、ホスホ−セリン87を示す。
図3A〜Cは、様々なキナーゼについてのインビトロでのキナーゼ活性の結果を示す。図2Aは、全ASを示す。図3Bは、セリン129を示す。図3Cは、ホスホ−セリン87を示す。
図4AおよびBは、図3Aおよび3Bのアッセイ結果に対するリン脂質の影響を示す。図4Aは、全ASを示す。図4Bは、セリン129を示す。
図5は、293−シヌクレイン細胞へのPLK2に対するcDNAのトランスフェクションの結果を示す。細胞を、全シヌクレインレベルおよびホスホ−シヌクレインレベルについてELISAによって分析した。
図6は、HEK−シヌクレイン細胞へのGPRK6およびPLK2に対するcDNAのトランスフェクションの結果を示す。
図7は、第2の供給源に由来するsiRNAを使用したPLK2のノックダウンが、リン酸化されたα−シヌクレインの割合の低下を引き起こすことを示す。
図8Aおよび8Bは、推定されるキナーゼによるインビトロでのα−シヌクレインのリン酸化がα−シヌクレインKOマウスの脳を標的化することを示す。
図9Aおよび9Bは、推定されるキナーゼによるインビトロでのα−シヌクレインのリン酸化がα−シヌクレインKOマウスの脳を標的化することを示す。
図10は、PLK2のsiRNAによるノックダウンが、α−シヌクレインのリン酸化を減少させるが、PLK3またはPLK4のsiRNAによるノックダウンによってはそうはならないことを示す。] 図10 図1A 図1B 図1C 図1D 図1E 図1F 図2 図2A 図2B
[0016] I.定義
用語「薬剤」は、薬理学的活性を有しているか、または薬理学的活性を有している可能性がある化合物を記載するために使用される。薬剤には、既知の薬物である化合物、その薬理学的活性は同定されているが、さらなる治療的評価を受けている化合物、および薬理学的活性についてスクリーニングされるコレクションおよびライブラリーのメンバーである化合物が含まれる。]
[0017] 「薬理学的」活性は、薬剤が疾患の予防または処置に有用であるか、または有用である可能性があることを示すスクリーニングシステムにおいて、薬剤が活性を示すことを意味する。スクリーニングシステムは、インビトロ、細胞、動物、またはヒトであり得る。薬剤は、薬理学的活性を有しているとして記載することができるが、それにもかかわらず、疾患の処置における実際の予防的有用性または治療的有用性を確定するためには、さらなる試験が必要である場合がある。]
[0018] レヴィー様小体は、ヒト患者において見られるレヴィー小体の特徴の一部または全てに類似する、トランスジェニック動物において見られるα−シヌクレインの沈着である。好ましい特徴は、密集したα−シヌクレイン陽性封入体である。これらの封入体は、好ましくは、年齢依存性様式で形成する。α−シヌクレイン陽性封入体の形成によっては、好ましくは、観察することができる細胞病理学が生じ、罹患したニューロンの機能の喪失につながる。罹患したニューロンの機能の喪失は、行動試験、神経薬理学的反応の評価、および電気生理学によって決定することができる。]
[0019] 表現「特異的に結合する」は、タンパク質および他の生物製剤の不均質な集団の存在下での、そのタンパク質の存在を決定づける結合反応をいう。したがって、指定される条件下で、特定のリガンドは特定のタンパク質に優先的に結合し、そして試料中に存在する有意な量の他のタンパク質には結合しない。タンパク質に特異的に結合する抗体のような分子は、多くの場合、少なくとも106M−1または107M−1、好ましくは、108M−1〜109M−1、そしてさらに好ましくは、約1010M−1〜1011M−1またはそれ以上の結合定数を有する。様々な免疫アッセイ形式を、特定のタンパク質と特異的に免疫反応する抗体を選択するために使用することができる。例えば、固相ELISA免疫アッセイは、タンパク質と特異的に免疫反応するモノクローナル抗体を選択するために日常的に使用されている。特異的免疫反応性を決定するために使用することができる免疫アッセイ形式と条件の例については、例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照のこと。]
[0020] 配列比較のためには、典型的には、1つの配列が参照配列とされ、これに対して、試験配列が比較される。配列比較アルゴリズムが使用される場合は、試験配列と参照配列がコンピューターに入力され、続いて、必要に応じて座標が設定され、そして配列アルゴリズムプログラムのパラメーターが設定される。その後、配列比較アルゴリズムによって、参照配列に対する試験配列(単数または複数)のパーセント配列同一性が、設定されたプログラムのパラメーターに基づいて計算される。]
[0021] 比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、Smith & Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman & Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson & Lipman,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,85:2444(1988)の類似性の検索方法によって、これらのアルゴリズムのコンピューターによる実行によって(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、あるいは、目視検査(一般的には、Ausubelら(前出)を参照のこと)によって、行うことができる。]
[0022] パーセント配列同一性および配列類似性を決定するために適しているアルゴリズムの別の例は、BLASTアルゴリズムである。これは、Altschulら、J.Mol.Biol.215:403−410(1990)に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公に入手することができる。このアルゴリズムには、データベース配列の中の同じ長さのワードとアラインメントされた場合に、いくらかのポジティブに評価された閾値Tと適合するかまたはそれを満たすかのいずれかである、照会配列(query sequence)中の長さWの短いワードを特定することにより、高スコアの配列対(HSP)を最初に特定する工程が含まれる。Tは、周辺のワードスコア閾値と呼ばれる(Altschulら(前出))。これらの最初の周辺ワードのヒットは、それらが含まれるより長いHSPを見つけるための最初の検索のための種となる。このワードのヒットは、その後、累積アラインメントスコアを増大させることができる限りは、それぞれの配列に沿って両方の方向に伸ばされる。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメーターM(一致している残基の対についての見返りスコア(reward score);常に、>0)、およびN(一致していない残基についてのペナルティースコア;常に、<0)を使用して計算される。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスが、累積スコアを計算するために使用される。それぞれの方向のワードのヒットの伸張は、累積アラインメントスコアが、その最大に達した値から照会Xによって低下した場合;累積スコアが、1つ以上のネガティブにスコアされる残基のアラインメントの累積が原因で0またはそれ未満になった場合;あるいは、いずれかの配列の末端に達した場合には、停止させられる。核酸またはポリペプチドが本発明の範囲に含まれているかどうかを同定するためには、BLASTプログラムのデフォルトパラメーターが適している。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列について)では、11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=−4、および両方の鎖の比較がデフォルトとして使用される。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムでは、3のワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスがデフォルトとして使用される。TBLATNプログラム(ヌクレオチド配列についてタンパク質配列が使用される)では、3のワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックスがデフォルトとして使用される(Henikoff & Henikoff,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:10915(1989)を参照のこと)。]
[0023] パーセント配列同一性を計算することに加えて、BLASTアルゴリズムによってはまた、2つの配列間での類似性の統計分析を行うこともできる(例えば、Karlin & Altschul(1993)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,90:5873−5787を参照のこと)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最少和可能性(smallest sum probability)(P(N))である。これによっては、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間で一致が偶然に発生する可能性の目安が提供される。例えば、核酸は、参照核酸に対する試験核酸の比較における最少和可能性が、約0.1未満、より好ましくは、約0.01未満、そして最も好ましくは、約0.001未満である場合に、参照配列に対して類似であると考えられる。]
[0024] アミノ酸置換を保存的または非保存的として分類する目的のためには、アミノ酸は以下のようにグループ分けされる:グループI(疎水性側鎖):ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;グループII(中性親水性側鎖):cys、ser、thr;グループIII(酸性側鎖):asp、glu;グループIV(塩基性側鎖):asn、gln、his、lys、arg;グループV(鎖の方向性に影響を及ぼす残基):gly、pro;およびグループVI(芳香族側鎖):trp、tyr、phe。保存的置換には、同じクラスのアミノ酸の間での置換が含まれる。非保存的置換は、これらのクラスうちの1つのクラスの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することである。]
[0025] 本発明の治療薬は、典型的には、望ましくない混入物質を含まない実質的に純粋なものである。このことは、薬剤が、典型的には、少なくとも約50%w/w(重量/重量)の純度であり、さらに、これには妨害性タンパク質および混入物質が実質的に含まれていないことを意味している。多くの場合、薬剤は、少なくとも約80%w/wであり、そしてより好ましくは、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%w/wの純度である。しかし、従来のタンパク質精製技術を使用して、少なくとも99%w/wの均質なペプチドを得ることができる。]
[0026] 用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、完全な抗体およびその結合性断片が含まれるものとして使用される。典型的には、断片は、抗原断片に対する特異的結合のためにそれらが誘導された完全な抗体と競合し、これには別々の重鎖、軽鎖Fab、Fab’F(ab’)2、Fabc、およびFvが含まれる。断片は、組換えDNA技術により生成されるか、または完全な免疫グロブリンの酵素的または化学的分離により生成される。用語「抗体」にはまた、他のタンパク質との融合タンパク質に化学的に結合させられているか、または融合タンパク質として発現される、1つまたは複数の免疫グロブリン鎖も含まれる。用語「抗体」にはまた、二重特異性抗体が含まれる。二重特異性抗体または二官能性抗体は、2種類の異なる重鎖/軽鎖対を有しており、2種類の異なる結合部位を有している、人工的なハイブリッド抗体である。二重特異的抗体を、ハイブリドーマの融合または複数のFab’断片の連結を含む様々な方法によって生成させることができる(例えば、Songsivilai & Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148,1547−1553(1992)を参照のこと)。]
[0027] 障害の徴候は、正常な機能、感覚、または外観からの逸脱を示している障害を有している個体が経験する現象を意味する。]
[0028] 障害の徴候は、障害の存在またはリスクを示すために役立つ何らかの身体的徴候である。]
[0029] 用語「患者」には、予防的処置または治療的処置のいずれかを受けているヒトおよびその他の哺乳動物被験体が含まれる。]
[0030] 本明細書中で使用される場合は、症状(例えば、パーキンソン病)または患者の「処置」は、有用な結果または所望される結果を得るための工程を行うことをいう。本発明の目的について、有用な結果または所望される結果としては、パーキンソン病の1つまたは複数の症状の緩和または軽減、病変の範囲の縮小、疾患の進行を遅らせるかまたは遅くすること、疾患状態の軽減、改善、または安定化が挙げられるが、これらに限定されない。]
[0031] 本明細書中で使用される場合は、薬物の「治療有効量」は、パーキンソン病と診断された被験体、またはパーキンソン病を発症するリスクがあると診断された被験体に投与された場合に、意図される治療効果(例えば、被験体における疾患の1つまたは複数の徴候の緩和、軽減、改善、あるいは排除)を有するであろう、薬物の量である。1用量の投与によって完全な治療効果が得られる必要は必ずしもなく、完全な治療効果は、一連の複数回の投与後にしか得られない場合もある。したがって、治療有効量は、1回または複数回の投与において投与され得る。]
[0032] 1つまたは複数の記載された構成要素を「含む」組成物または方法には、具体的に記載されていない他の構成要素が含まれる場合がある。例えば、α−シヌクレインペプチドを含む組成物には、単離されたα−シヌクレインペプチドおよびより大型のポリペプチド配列の構成成分としてのα−シヌクレインペプチドの両方が含まれる。]
[0033] 文脈から明らかである場合を除き、本発明の個々の実施形態、構成要素、工程、または特徴は、任意の他のものと組み合わせて使用することができる。]
[0034] II.一般論
本発明は、レヴィー小体病(LBD)を、α−シヌクレインをリン酸化し、そして/またはその生産を阻害する1種類または複数のキナーゼを阻害することによって阻害することができるという見識に一部基づく。本発明の実施は機構の理解には依存しないが、セリン−129でのα−シヌクレインのリン酸化は、α−シヌクレインの細胞内での沈着の形成をもたらす一連の分子事象の1つであると考えられる。ser−129でリン酸化されたα−シヌクレインは、びまん性レヴィー小体病(DLBD)、多系統委縮症(MSA)、およびパーキンソン病(PD)の家族性形態において、レヴィー小体(LB)の中に非常に多く存在する。LB中のホスホ−α−シヌクレインの異常な蓄積は、ホスホ−シヌクレインが、LBの形成を導く病原性種であり得ること、ならびに、そのリン酸化を担うか、またはα−シヌクレイン自体の生産を調節するキナーゼ(単数または複数)が、複数のシヌクレイノパシーの処置のための治療標的(単数または複数)であることを示している。この一連の分子事象の他の事象には、おそらく、リン酸化後のタンパク質分解的切断が含まれる(2004年5月19日に出願されたWO2005/013889を参照のこと)。]
[0035] α−シヌクレインのリン酸化を主に担っているキナーゼ(単数または複数)の同定により、関連するキナーゼ(単数または複数)の活性を低下させる化合物を同定することが可能となる。便宜上、本明細書中での「α−シヌクレインのリン酸化」との言及は、セリン−129でのリン酸化をいう(しかし、別の場所、例えば、セリン−87でのさらなるリン酸化が排除されるわけではない)。]
[0036] 本出願では、キナーゼ活性の低下に、α−シヌクレインのリン酸化の減少および/または全α−シヌクレインレベルの低下が付随する、いくつかのキナーゼの同定を報告する。特に、キナーゼPLK2は、α−シヌクレインのリン酸化を減少させるために阻害することができる。本発明により、(i)これらのキナーゼの活性および発現の調節因子を同定する方法、(ii)キナーゼ阻害剤を使用してレヴィー小体病を処置する方法、および(iii)レヴィー小体病の処置に使用される例示的なキナーゼ阻害剤が提供される。]
[0037] 以下の実施例で議論されるように、本発明者らは、α−シヌクレインのリン酸化に重要なキナーゼを同定するために様々な実験を行った。セクションIIIでは、α−シヌクレインキナーゼを同定するためのストラテジーを説明する。セクションIVでは、有望なα−シヌクレインキナーゼを同定するために使用したスクリーニングアッセイの結果をまとめる。セクションVでは、シヌクレインキナーゼの活性または発現を低下させ、そして治療的に使用することができる薬剤を記載する。セクションVIでは、パーキンソン病および他のレヴィー小体病を処置するための方法を記載する。セクションVIIではレヴィー小体病を記載する。セクションVIIIでは、レヴィー小体病のトランスジェニック動物モデルと細胞モデルを記載する。セクションIXでは、PLK2および他のキナーゼの調節因子の同定のための方法を記載する。セクションXでは、α−シヌクレインの単離のための方法を記載する。セクションXIでは、上記スクリーニングアッセイを含む実験結果を提供する。]
[0038] III.標的キナーゼの同定
α−シヌクレインのリン酸化を直接または間接的に調節するキナーゼを、実施例に示すように同定することができる。一般的には、可能性のある阻害剤のライブラリーが、キナーゼ遺伝子のコレクションの既知の配列に基づいて設計される。ライブラリーのメンバーは、上記の分子のタイプのうちのいずれかであり得る。ライブラリーのメンバーは、その後、α−シヌクレインを発現する細胞に導入される。細胞とα−シヌクレインのいずれもがヒトのものであることが好ましい。通常は、そのような細胞は、ヒトのα−シヌクレインをコードするDNAと、試験されるライブラリーのメンバーをコードするDNAの両方でトランスフェクトされる。ライブラリーのメンバーは個別にスクリーニングすることができ、また、集団でスクリーニングすることもできる。ライブラリーのメンバーの導入と、そのライブラリーのメンバーが発現され、そのキナーゼの抑制を行うために十分な時間の培養の後、全α−シヌクレインレベルとリン酸化されたα−シヌクレインのレベルが測定され、キナーゼの発現を抑制するためのライブラリーのメンバーで処理されなかった別の同様の対照細胞中での対応するレベルと比較される。測定は、α−シヌクレインの全レベルを測定するためのα−シヌクレイン(好ましくは、ヒトのα−シヌクレイン)に特異的な抗体と、リン酸化されたα−シヌクレインのレベルを測定するためのリン酸化されたα−シヌクレインに特異的な抗体とを使用して、免疫アッセイによって行うことができる。例示的な抗体は、参考として本明細書に援用されるWO05047860に記載されている。測定誤差の典型的な範囲を超えるという意味で有意である、処理された細胞と対照細胞との間でのリン酸化されたα−シヌクレインのレベルの低下は、細胞に導入された阻害剤がキナーゼを阻害し、これが直接または間接的に、α−シヌクレインのリン酸化に影響を及ぼしたことを示している。キナーゼの同定は、阻害剤を個別にスクリーニングすることによって、または阻害剤が集団でスクリーニングされる場合には、阻害剤をコードする核酸を配列決定することによってのいずれかでの阻害剤の同定から決定することができる。同様に、そのようなレベルの測定における典型的な実験誤差の範囲を超える、処理された細胞と対照細胞との間でのα−シヌクレインの全レベルの低下は、その阻害剤が、α−シヌクレインの発現レベルに間接的に影響を与えるキナーゼを阻害することの指標を提供する。]
[0039] 最初のスクリーニングによって同定されたキナーゼ(特に、セリンキナーゼであることが公知のキナーゼ)は、その後、インビトロで、細胞中で、またはトランスジェニック動物モデルにおいて、α−シヌクレインをリン酸化するそれらの能力について試験することができる。インビトロでのアッセイは、キナーゼがα−シヌクレインを直接リン酸化するかどうか、したがって、α−シヌクレインを直接リン酸化することができると考えられる最初のスクリーニングにおいて同定されたキナーゼについてのみ有用であるかどうかの指標となる。細胞アッセイおよびトランスジェニックアッセイは、直接または間接的のいずれかでリン酸化に影響を及ぼすキナーゼをスクリーニングするために使用することができる。インビトロでのアッセイは、適切な緩衝液中で、α−シヌクレインを、試験されるキナーゼおよびATPと接触させることによって行われ得る。好ましくは、ATPはγ−32P ATPであり、この場合、リン酸化されたα−シヌクレインは放射標識されるか、またはゲル上で検出することができる。リン酸化はまた、先に記載されたように、リン酸化されたα−シヌクレインに特異的な抗体を使用して測定することもできる。あるいは、リン酸化は、共役アッセイ(coupled assay)を使用してATPの消費を測定することによって間接的に測定することができる。ここでは、ADPは、例えば、Nature 78,632(1956);Mol.Pharmacol.6,31−40(1970)に記載されているように検出される。リン酸化の程度は、キナーゼまたはATP、あるいは両方が除外された対照と比較することができる。リン酸化の増加は、キナーゼがα−シヌクレインを直接リン酸化することの指標である。細胞アッセイは、α−シヌクレインを発現する細胞上で行われる。好ましくは、ヒトのα−シヌクレインが細胞にトランスフェクトされる。キナーゼを発現することができる核酸もまた、細胞にトランスフェクトされる。細胞中でのリン酸化されたα−シヌクレインのレベルは、キナーゼがトランスフェクトされていない同様の対照細胞中でのリン酸化されたα−シヌクレインのレベルと比較して測定される。リン酸化の増加は、キナーゼがα−シヌクレインを直接または間接的にリン酸化することの指標である。トランスジェニックアッセイは、レヴィー小体様の沈着を生じる傾向があるヒトのα−シヌクレインを発現するトランスジェニック動物を、キナーゼトランスジーンもまた発現する類似する動物と比較することによって行うことができる。α−シヌクレイントランスジーンだけを持つトランスジェニック動物と比較した、さらに別のキナーゼトランスジーンを持つトランスジェニック動物における、リン酸化されたα−シヌクレインおよび/またはレヴィー小体様の沈着の減少は、このキナーゼがα−シヌクレインのリン酸化に直接または間接的に関係があることの指標である。]
[0040] IV.標的キナーゼ
表1A、1B、および1Cは、その阻害によってser−129位でのリン酸化を調節するタンパク質を示す。表1Aは、セリンおよび/またはスレオニン残基を、そして場合によってはチロシンをリン酸化することができるキナーゼを示す。表1Bは、セリン残基を修飾することができない(知っている限りにおいて)チロシンキナーゼを示す。表1Cは、非タンパク質標的をリン酸化するが、タンパク質をリン酸化することは公知ではないキナーゼを示す。表1Aの上の部分に由来するキナーゼは、α−シヌクレインのser−129の直接のリン酸化についての候補である。表1Bの上の部分に由来するキナーゼもまた、α−シヌクレインを間接的にリン酸化する役割を介して有用な治療標的である。表1Cの上の部分のタンパク質もまた、同じ理由から有用な治療標的である。各表の1列目、2列目、および3列目は、遺伝子の名称、キナーゼの名称、およびキナーゼのGenbank登録番号を示す。次の列は、そのキナーゼに対するsiRNAでの細胞の処理により、ser−129のリン酸化が減少する(「ダウン」)かまたは増大する(「アップ」)かを示している。次の3列は、測定したリン酸化レベルが3回の別々の実験の平均から逸脱している標準偏差の数値を示す。最後の2列は、キナーゼファミリー(すなわち、アミノ酸特異性)とグループを示す。]
[0041] 表2は、その阻害によってヒトのα−シヌクレインの全体的なレベルを調節するが、リン酸化の割合の変化を伴わないキナーゼを示す。表2は、ヒトのα−シヌクレインのレベルの最も大きな低下を伴うキナーゼを全て示す。列については、表1A、1B、および1Cと同様に分類した。]
[0042] 表3および表4は、ヒトのα−シヌクレインの全体的なレベルを調節することが実施例において確証された、表1および表2によるキナーゼを示す。検証したこれらのキナーゼには、PLK2、APEG1、CDC7L1、MET、GRK1、2、6、および7を、α−シヌクレインを直接または間接的にリン酸化するキナーゼとして含めた。阻害された場合に、α−シヌクレインのリン酸化を増加させることが明らかになったキナーゼPRKG1、MAPK13、およびGAKは、α−シヌクレインのリン酸化のネガティブな調節因子としておそらく機能する。インビトロでのリン酸化実験によるさらなるデータにより、インビトロでα−シヌクレインをリン酸化することができるとしてPKL2、GRK2、5、6、および7が同定され、さらに、CKIIおよびIKBKBも同定された。細胞培養物中でのさらなる実験は、PLK2とGPRK6が、細胞培養物中でα−シヌクレインを直接リン酸化できることを示していた。これらのデータは、免疫組織化学によって裏付けられた。まとめると、PLK2、およびそれほどではないにしてもGRK6が、レヴィー小体病における治療介入のための特に好ましい標的である。なぜなら、これらは、α−シヌクレインを直接リン酸化することができるからである。PLK2およびGRK6を阻害する薬剤もまた、α−シヌクレインのリン酸化を阻害し、それにより、レヴィー小体病の処置または予防に使用することができる。]
[0043] 以下の実施例では、siRNAでの細胞のトランスフェクションと特異的キナーゼ標的のノックダウンを、α−シヌクレインのリン酸化を直接または間接的に調節するキナーゼを同定するために使用した。その後のインビトロでおよび細胞培養物中での実験は、これらのキナーゼのうちの2つ、PLK2が、α−シヌクレインのセリン129を直接、かつ特異的にリン酸化することを示していた。さらなる実験は、PLK2が、α−シヌクレインのセリン129を、使用した実験条件下で、GRK6および本明細書中に記載した他のキナーゼよりもはるかに大きい程度にリン酸化したことを示していた。したがって、PLK2は、極めて有望なシヌクレインキナーゼである。PLK2がシヌクレインキナーゼであることのさらなる証拠が実施例11〜実施例16で提供される。シヌクレインのリン酸化は、PLK2に特異的なsiRNAで処理された細胞の中では減少し、PLK2活性についての複数の阻害剤が、初代神経培養物およびPLK2を過剰発現する細胞を含む様々な細胞のタイプの中でシヌクレインのリン酸化を減少させ、複数の阻害剤が、PLK2に対するそれらの作用について観察されたEC50と一致するEC50で内因性のキナーゼに影響を及ぼす。]
[0044] PLK2はPolo様キナーゼであり、これは、G1細胞周期タンパク質であり、細胞内での代謝回転が速く、シナプス可塑性に関係がある脳内で発現される。PLKファミリーのメンバーはセリン/スレオニンキナーゼであり、これには、N末端キナーゼドメインと、2つのpoloボックスドメインからなる(PLK1〜3)かまたは1つのpoloボックスドメイン(PLK4)からなるC末端調節ドメインとを持つ、4つのメンバーが含まれる。poloボックスドメインは、足場タンパク質に結合するように作用し、これはその後、PLKを細胞内の特異的位置に対して標的化させ、そして、それらの標的タンパク質をリン酸化するように作用する(Seeburg,D.P.ら、Oncogene,2005)。poloボックスはまた、キナーゼ活性を妨害する立体構造を採用することによって、キナーゼドメインをネガティブに調節するようにも作用する。poloボックスが足場タンパク質に結合すると、poloボックスは、キナーゼドメインから切り離され、その際に、キナーゼは活性な状態となり、その基質をリン酸化することができる。Polo様キナーゼは、Seeburgら、2005,「Polo−like kinases in the nervous system」 Oncogene 24:292−8;Loweryら、2005,「Structure and function of Polo−like kinases」 Oncogene 24:248−59;およびWinklesら、2005,「Differential regulation of polo−like kinase 1,2,3,and 4 gene expression in mammalian cells and tissues」 Oncogene 24:260−6に記載されている。DNA配列とタンパク質配列は、以下の登録番号で見ることができる:]
[0045] PLK2が活性化されると、これは、活性化されたニューロンの樹状突起に対して標的化させられる。ここで、PLK2は、シナプス終末にあるタンパク質をリン酸化すると考えられている。PLK2についての例示的な登録番号は表1Aに提供される。PLK2の配列は、Maら、Mol.Cell.Biol.23(19),6936−6943(2003),Burnsら、Mol.Cell.Biol.23(16),5556−5571(2003),Matsudaら、Oncogene 22(21),3307−3318(2003),Shimizu−Yoshidaら、Biochem.Biophys.Res.Commun.289(2),491−498(2001),Libyら、DNA seq.11(6),527−533(2001),Holtrichら、Oncogene 19(42),4832−4839,Ouyangら、Oncogene 18(44),6029−6036(1999)、およびKauselmannら、EMBO J.18(20),5528−5539のいずれか1つの中で見ることができる。PLK2のアミノ酸配列または核酸配列との言及には、これらの参考文献のうちの任意のものの配列、またはそれらの対立遺伝子変異体が含まれる。PLK2はSNKとも呼ばれる。一貫性のために、名称PLK2が本特許出願全体を通じて使用される。]
[0046] APEG1、CDC7L1、MET、IKBKB、CKII、GRK1、GRK2、GRK6、およびGRK7もまた、レヴィー小体病における治療的介入の標的である。なぜなら、これらはおそらく、直接のキナーゼ(単数または複数)の間接的な活性化因子であるからである。したがって、APEG1、CDC7L1、MET、IKBKB、CKII、GRK1、GRK2、GRK6、およびGRK7を阻害する薬剤もまた、α−シヌクレインのリン酸化を阻害し、そしてレヴィー小体病の処置または予防のために使用することができる。PRKG1、MAPK13、およびGAKは、α−シヌクレインのリン酸化のネガティブな調節因子である。したがって、これらのキナーゼを活性化させる薬剤は、α−シヌクレインのリン酸化を減少させ、レヴィー小体病の処置または予防に使用することができる。]
[0047] GRK6はGPRK6とも呼ばれ、これはGタンパク質共役受容体キナーゼであり、シグナル伝達に関与している。Gタンパク質共役受容体キナーゼは、リガンドによって活性化されたGタンパク質共役受容体をリン酸化し、脱感作させる。GRK6の発現は、脳のほとんどの領域において、MPTP障害部で有意に上昇することがこれまでに示されている。一貫性のために、名称GRK6が、本特許出願全体を通じて使用されるであろう。例示的な登録番号は表1Aに提供される。GRK6の配列は、以下のいずれかの中で見ることができる:Teliら、Anesthesiology 98(2),343−348(2003);Miyagawaら、Biophys.Res.Commun.300(3),669−673(2003);Gaudreauら、J.Biol.Chem.277(35),31567−31576(2002);Grange−Midroitら、Brain Res.Mol.Brain Res.101(1−2),39−51(2002);Willetsら、J.Biol.Chem.277(18),15523−15529(2002);Blaukatら、J.Biol.Chem.276(44),40431−40440(2001);Zhouら、J.Pharmacol.Exp.Ther.298(3),1243−1251(2001);Proninら、J.Biol.Chem.275(34),26515−26522(2000);Tiruppathi,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,97(13),7440−7445(2000);Premontら、J.Biol.Chem.,274(41),29381−29389(1999);Brenninkmeijerら、J.Endocrinol.162(3),401−408(1999);Hallら、J.Biol.Chem.274(34),24328−24334(1999);Lazariら、Mol.Endocrinol.13(6),866−878(1999);Milcentら、Biochem.Biophys.Res.Commun.259(1),224−229(1999);Premont,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95(24),14082−14087(1998);Stoffelら、Biochemistry 37(46),16053−16059(1998);Loudonら、J.Biol.Chem.272(43),27422−27427(1997);Freedmanら、J.Biol.Chem.272(28),17734−17743(1997);Bullrichら、Cytogenet.Cell Genet.70(3−4),250−254(1995);Stoffelら、;J.Biol.Chem.269(45),27791−27794(1994);Loudonら、J.Biol.Chem.269(36),22691−22697(1994);Haribabu and Snyderman,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90(20),9398−9402(1993);およびBenovic and Gomez,J.Biol.Chem.268(26),19521−19527(1993)。GRK6のアミノ酸配列または核酸配列との言及には、これらの参考文献のうちの任意のもののアミノ酸配列もしくは核酸配列、およびそれらの対立遺伝子変異体が含まれる。]
[0048] カゼインキナーゼ2(カゼインキナーゼII、CKII、CSNK2、およびCSNKIIとも呼ばれる)は、α−シヌクレインをリン酸化することが報告されている。一貫性のために、名称CKIIが本明細書中で使用されるであろう。CKIIの配列は、以下の登録番号でGenbankに提供されており:NM_001896、NM_001320、そして/または以下のうちの任意の1つの中で見ることができる:Panasyuら、J.Biol.Chem.281(42),31188−31201(2006);Salviら、FEBSLett.580(16),3948−3952(2006);Limら、Cell 125(4),801−814(2006);Llorensら、Biochem.J.394(Pt.1),227−236,(2006);Bjorling−Poulsenら、Oncogene 24(40),6194−6200(2005);Schubertら、Eur.J.Biochem.204(2),875−883(1991);Vossら、J.Biol.Chem.266(21),13706−13711(1991);Yang−Fengら、Genomics 8(4),741−742(1990);Heller−Harrisonら、Biochemistry 28(23),9053−9058(1989);Ackermannら、Mol.Cell.Biochem.274(1−2),91−101(2005);Barrios−Rodilesら、Science 307(5715),1621−1625(2005);Andersenら、Nature 433(7021),77−83(2005);Ballifら、Mol.Cell.Proteomics,3(11),1093−1101(2004);Beausoleilら、PNAS,USA 101(33),12130−12135(2004);Maraisら、EMBO J.11(1),97−105(1992)。CKIIのアミノ酸配列または核酸配列との言及には、これらの参考文献のうちの任意のもののアミノ酸配列もしくは核酸配列、およびそれらの対立遺伝子変異体が含まれる。]
[0049] IKBKBおよび関連するIKBKAは、NFkB炎症経路のポジティブな調節因子である。IKBKBの配列は、以下の登録番号でGenbankに提供されており:NM_001556、そして/または以下のうちの任意の1つの中で見ることができる:Caterinoら、FEBSLett.580(28−29),6527−6532(2006);Castleら、Genome Biol.4(10),R66(2003);Satohら、Biochim,Biophys.Acta 1600(103),61−67(2002),Caohuy,and Pollard,J.Biol.Chem.277(28),25217−25225(2002);Yuら、J.Biol.Chem.277(18),15819−15827(2002);Selbertら、J.Cell.Sci.108(Pt.l),85095(1995);Shirvanら、Biochemistry 33(22),6888−6901(1994);Creutzら、Biochem.Biophys.Res.Commun.184(1),347−352(1992);Megendzoら、J.Biol.Chem.266(5),3228−3232(1991);Burnsら、PNAS,USA 86(10),3798−3802(1989)。IKBKBのアミノ酸配列または核酸配列との言及には、これらの参考文献のうちの任意のもののアミノ酸配列もしくは核酸配列、およびそれらの対立遺伝子変異体が含まれる。]
[0050] シンフィリンは、α−シヌクレインに結合することが示されているシヌクレイン結合タンパク質である。これ自体はキナーゼではないが、シンフィリンは、特にPLK2との組み合わせにおいて、シヌクレインのリン酸化を促進することが本明細書中で明らかにされた。シンフィリンは、PLK2依存性様式でシヌクレインのリン酸化を促進するようであった。シンフィリンの配列は以下の登録番号でGenbankに提供されており:NM_005460、そして/または以下のうちの任意の1つの中で見ることができる:Tanjiら、Am.J.Pathol.169(2),553−565(2006);Eyalら、PNAS,USA 103(15),5917−5922(2006);Avrahamら、J.Biol.Chem.280(52),42877−42886(2005);Bandopadhyayら、Neurobiol.Dis.20(2),401−411(2005);Limら、J.Neurosci.25(8),2002−2009(2005);Ribeiroら、J.Biol.Chem.277(26),23927−23933(2002);Chungら、Nat.Med.7(10),1144−1150(2001);Engelenderら、Mamm.Genome 11(9),763−766(2000);Engelenderら、Nat.Genet.22(1),110−114(1999)。シンフィリンのアミノ酸配列または核酸配列との言及には、これらの参考文献のうちの任意のもののアミノ酸配列もしくは核酸配列、およびそれらの対立遺伝子変異体が含まれる。]
[0051] V.シヌクレインキナーゼの活性または発現を調節する薬剤
1つの態様では、本発明により、本明細書中に記載されるキナーゼの活性または発現を調節する薬剤を投与することによる、LBDの処置または予防を行う方法が提供される。十分に特性決定された一般的なクラスの多数の薬剤を使用することができる。これらには、阻害性核酸(例えば、siRNA、アンチセンスRNA、リボザイム)、阻害性タンパク質(例えば、亜鉛フィンガータンパク質)、抗体、および低分子阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。]
[0052] 好ましくは、阻害される遺伝子はPLK2またはGRK6である。なぜなら、これらの遺伝子によってコードされるキナーゼは、α−シヌクレイン、特に、PLK2を直接リン酸化するからである。APEG1、CDC7L1、MET GRK1、GRK2、GRK6、IKBKB、CKII、およびGRK7遺伝子もまた、阻害についての好ましい標的である。なぜなら、これらはおそらく、直接のキナーゼ(単数または複数)の間接的な活性化因子をコードするからである。PRKG1、MAPK13、およびGAKは、レヴィー小体病における活性化についての好ましい候補である。なぜなら、これらは、α−シヌクレインのリン酸化のネガティブな調節因子をコードするからである。シンフィリン遺伝子が阻害についての好ましい標的である。なぜなら、シンフィリンはキナーゼではないが、(通常は、PLK2のようなキナーゼの存在下での)α−シヌクレインのリン酸化の増加と関係があるからである。]
[0053] PLK2に対して、1つまたは複数の他のpolo様キナーゼファミリーのメンバー(すなわち、PLK1、PLK3、およびPLK4)を上回る特異性を示す阻害剤が好ましい。治療的用途に特に適している阻害剤は、以下の特性のうちの少なくとも1つについて選択することによって同定することができる:
I.PLK2活性を阻害し、そしてPLK1に対しては効果がないか、または効果が低い。]
[0054] II.PLK2活性を阻害し、そしてPLK3に対しては効果がないか、または効果が低い。]
[0055] III.PLK2活性を阻害し、そしてPLK4に対しては効果がないか、または効果が低い。]
[0056] IV.PLK2活性を阻害し、そしてPLK1とPLK3に対しては効果がないか、または効果が低い。]
[0057] V.PLK2活性を阻害し、そしてPLK1とPLK4に対しては効果がないか、または効果が低い。]
[0058] VI.PLK2活性を阻害し、そしてPLK1、PLK3、およびPLK4に対しては効果がないか、または効果が低い。]
[0059] 本発明の状況で使用される場合は、「効果がない」は、薬剤の投与によって発現が低下しないか、または生理学的には有意ではない程度には発現が低下しないことを意味する。「効果が低い」は、PLK2の阻害についてのEC50またはKi値が、参照のPLK(単数または複数)についてのEC50よりも低いことを意味する。いくつかの実施形態では、EC50は多くとも2分の1であり得、そして時には多くとも10分の1であり、そして多くとも100分の1であり、またはさらには多くとも1000分の1であり得る。]
[0060] 本発明の状況で使用される場合は、PLK2「活性」の阻害は、タンパク質の発現を低下させること(例えば、PLK2遺伝子の発現を低下させること、PLK2 RNAのプロセシングを妨害すること、PLK2mRNAもしくはタンパク質の半減期を短くすること)によって、あるいは、PLK2キナーゼ活性の競合的または非競合的阻害によって生じ得る。]
[0061] PLK2に対して、非poloキナーゼ(特に、そこに対して薬剤が送達される組織中で発現される他のキナーゼ)を上回る特異性を示す阻害剤が特に好ましい。好ましい実施形態では、これらの薬剤は、PLK2と比較して、非poloキナーゼについて、非poloキナーゼを阻害しない(または、10倍高い、時には100倍高い、そして時には1000倍高いEC50値を有する)。しかし、他のキナーゼの阻害は、キナーゼの役割および発現に応じて寛容化され得る。例えば、腸で作用するキナーゼは、脳に送達された阻害剤によっては影響を受けない場合がある。]
[0062] 読者をさらに導くために、阻害性核酸(例えば、siRNA、アンチセンスRNA、リボザイム)、阻害性タンパク質(例えば、亜鉛フィンガータンパク質)、抗体、および低分子阻害剤が以下で説明される。]
[0063] A.阻害性ポリヌクレオチド
標的キナーゼの阻害剤のいくつかの例(PLK2を含む)が以下に記載される。ポリヌクレオチド阻害剤は、標的転写物中の特異的な標的配列に結合するように設計される。阻害剤は、PLK2 RNA中の標的部位に結合し、PLK1および/またはPLK3および/またはPLK4の中の標的部位には結合しないことが好ましい。適切な標的部位は、他のPLK中に正確に対応するセグメントを持たないPLK2のセグメントを選択することによって同定される。好ましくは、PLK2の選択されるセグメントには、実質的な配列同一性を持つ対応するセグメントは含まれない(例えば、PLK2から選択されるセグメントは、PLK4の中の最も対応するセグメントと、95%未満、90%、75%、または50%の配列同一性しか示さないはずである)。選択された標的セグメントはまた、好ましくは、これが偶然無関係な遺伝子と有意な配列同一性を示さないことを確実にするために、遺伝子のデータベースに対してスクリーニングされる。]
[0064] PLK2のポリヌクレオチド阻害剤は、好ましくは、PLK2mRNAもしくはタンパク質のレベルの少なくとも30%、50%、75%、95%、または99%の阻害を示し、これには、PLK1および/またはPLK3および/またはPLK4のmRNAもしくはタンパク質のレベルに関しては極わずかな低下しか伴わないか、または検出できるほどの低下は伴わない(すなわち、10%未満、5%、もしくは1%の阻害)。タンパク質の発現は、そのタンパク質に特異的に結合する抗体を使用して免疫学的分析を行うこと、続いて、抗体とタンパク質との間で形成された複合体の検出を行うことによって定量することができる。mRNAレベルは、例えば、ドットブロット分析、インサイチュハイブリダイゼーション、RT−PCR、定量的逆転写PCR(すなわち、いわゆる「TaqMan」法)、ノーザンブロット、および核酸プローブアレイ法によって定量化することができる。]
[0065] i)短い阻害性RNA
siRNAは比較的短く、少なくとも一部が二本鎖であるRNA分子である。これは、キナーゼ転写物のような相補性mRNA転写物の発現または翻訳を阻害するように働く。本発明の実施には機構の理解は必要ないが、siRNAは、相補性mRNA転写物の分解を誘導することによって作用すると考えられている。siRNAの設計および使用についての原理は、一般的には、WO99/32619,Elbashir,EMBO J.20,6877−6888(2001)、およびNykanenら、Cell 107,309−321(2001);WO01/29058によって記載されている。siRNAは、少なくとも部分的に相補的なRNAの2つの鎖から形成されており、個々の鎖は、好ましくは、10ヌクレオチド〜30ヌクレオチド、15ヌクレオチド〜25ヌクレオチド、または17ヌクレオチド〜23ヌクレオチド、または19ヌクレオチド〜21ヌクレオチドの長さである。鎖は、それらの長さ全体を通じて互いに完全に相補的である場合があり、また、そうでない場合には二本鎖分子の一方の末端または両方の末端に一本鎖の3’突出を有する場合もある。一本鎖の突出は、存在する場合には、通常は、1塩基〜6塩基であり、1塩基または2塩基が好ましい。siRNAのアンチセンス鎖は、本発明の遺伝子由来の転写物のセグメントに対して、実質的に相補的である(例えば、少なくとも80%、90%、95%、および好ましくは100%相補的である)ように選択される。siRNAの鎖の末端に、または末端付近に、任意の適合しない塩基が存在することが好ましい。末端にある適合しない塩基は、デオキシリボヌクレオチドであり得る。siRNAのセンス鎖は、目的の遺伝子転写物のセグメントの相補物とアナログの関係を示す。それぞれが19塩基の完全な相補性を持つ2つの鎖を有しており、そしてセンス鎖の3’末端に2つの適合しない塩基とアンチセンス鎖の3’末端に1つの適合しない塩基を有しているsiRNAが特に適している。]
[0066] siRNAがこのように、siRNAをコードするDNAの形態とは異なるように投与される場合は、siRNAの鎖には1つ以上のヌクレオチドアナログが含まれ得る。ヌクレオチドアナログは、阻害活性が実質的に影響を受けない位置(例えば、5’末端および/または3’末端にある領域、特に、一本鎖突出領域の中)に存在する。好ましいヌクレオチドアナログは、糖が修飾されたリボヌクレオチドまたは骨格が修飾されたリボヌクレオチドである。ヌクレオ塩基が修飾されたリボヌクレオチド(すなわち、自然界に存在するヌクレオ塩基の代わりに自然界には存在しないヌクレオ塩基(例えば、5位が修飾されたウリジンまたはシチジン)(例えば、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−ブロモウリジン);8位が修飾されたアデノシンおよびグアノシン(例えば、8−ブロモグアノシン);デアザヌクレオチド、例えば、7−デアザアデノシン;O−およびN−アルキル化ヌクレオチド、例えば、N6−メチルアデノシンを含むリボヌクレオチドもまた適している。好ましい糖が修飾されたリボヌクレオチドにおいては、2’OH基は、H、OR、R、ハロ、SH、SR、NH2、NHR、NR2、またはCN(式中、RはC1〜C6アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、ハロは、F、Cl、Br、またはIである)から選択される基によって置換される。好ましい骨格が修飾されたリボヌクレオチドにおいては、隣接するリボヌクレオチドとの連結を行うホスホエステル基が、修飾された基(例えば、ホスホチオエート基)によって置換される。さらに好ましい修飾は、siRNAの5’ヒドロキシド残基上にリン酸基を導入するための修飾である。そのような基は、ATPとT4キナーゼでのsiRNAの処理によって導入することができる。天然のRNAのホスホジエステル結合もまた、少なくとも1つの窒素または硫黄ヘテロ原子を含めるために修飾することができる。RNA構造の修飾は、dsRNAによって生じる、一部の生命体の中での一般的なパニック反応を回避しつつ、特異的な遺伝子の阻害を可能にするように状況に合わせることができる。同様に、複数の塩基を、アデノシンデアミナーゼの活性をブロックするように修飾することができる。]
[0067] そのような薬剤の一例は、PLK2に特異的なsiRNAである。PLK2をコードする遺伝子に対するsiRNAは、以下に記載される方法を使用して特異的に設計することができる。PLK2についての例示的な登録番号は、表1Aに提供されるように[NM_006622]である。ヒトのPLK2のアミノ酸配列はまた、配列番号2として示され、そして配列番号1は、このアミノ酸配列をコードする核酸配列である。便宜上、例示的な配列が以下に提供される。]
[0068] ]
[0069] ]
[0070] ii)siRNAの設計および生産
阻害性ポリヌクレオチドの利点は、これらを、極めて標的特異性が高くなるように設計できることである。例えば、PLK2に特異的なsiRNAは、PLK2を他のPLKと区別する標的配列を使用して設計することができる。プログラム「siDESIGN」(Dharmacon,Inc.,Lafayette,CO)を、任意の核酸配列についてのsiRNAを予測するために使用することができ、これは、dharmacon.comでワールド・ワイド・ウェブ(World Wide Web)上で入手することができる。siRNAを設計するための多数の他のプログラムは、他からも入手することができ、これには、Genscript(genscript.com/ssl−bin/app/rnaiでWeb上で入手することができる)が含まれ、また、Whitehead Institute for Biomedical Research jura.wi.mit.edu/pubint/http://iona.wi.mit.edu/siRNAext/からも入手することができる。siRNAを設計するための指針は、学術文献(例えば、Elbashirら、2001,「Duplexes of 21−nucleotide RNAs mediate RNA interference in cultured mammalian cells」Nature.411:494−8.;およびElbashirら、2001,「RNA interference is mediated by 21−and 22−nucleotide RNAs」Genes Dev.15:188−200を参照のこと)において入手することができ、また、ウェブ上でも公開されている(例えば「rnaiweb.com/RNAi/siRNA_Design/」および「protocol−online.org/prot/Protocols/Rules−of−siRNA−design−for−RNA−interference−−RNAi−3210.html」を参照のこと)。]
[0071] siRNAを生産するためには様々な方法がある。siRNAは、キナーゼ(例えば、PLK2)遺伝子からsiRNAを作製するキットを使用して作製することができる。例えば、「Dicer siRNA Generation」キット(カタログ番号T510001,Gene Therapy Systems,Inc.,San Diego,CA)は、インビトロで組換え体であるヒト酵素「ダイサー(dicer)」を使用して、長い二本鎖RNAを22bpのsiRNAに切断する。siRNAの混合物を生成させることにより、このキットは、標的遺伝子の発現を低下させるであろうsiRNAを作製することにおいて高い成功度を可能にする。同様に、Silencer(商標)siRNA Cocktail Kit(RNaseIII)(カタログ番号1625、Ambion,Inc.,Austin,TX)はダイサーの代わりにRNaseIIIを使用してdsRNAからsiRNAの混合物を生じさせる。ダイサーと同様に、RNaseIIIはdsRNAを2個〜3個のヌクレオチドの3’突出および5’−リン酸と3’−ヒドロキシル末端とを持つ、12bp〜30bpのdsRNA断片に切断する。製造業者によると、dsRNAはT7RNAポリメラーゼを用いて生成させられ、反応および精製のための成分はキットに含まれている。dsRNAはその後、RNaseIIIによって消化されて、siRNAの集団を生じる。キットには、インビトロでの転写によって長いdsRNAを合成するための試薬、およびそのようなdsRNAをRNaseIIIを使用してsiRNA様分子になるように消化するための試薬が含まれている。製造業者は、ユーザーには、反対向きのT7ファージポリメラーゼプロモーターを持つDNA鋳型、または転写される領域の反対側の末端上にプロモーターを持つ2つの別々の鋳型を供給することだけが求められることを示している。]
[0072] 本発明のsiRNAはまた、ベクターから発現させることもできる。典型的には、そのようなベクターは、対応する相補鎖をコードする第2のベクターと共に投与される。一旦、発現させられると、2つの鎖は互いにアニーリングし、機能性の二本鎖siRNAを形成する。本発明での使用に適している1つの例示的なベクターは、OligoEngine,Inc.(Seattle,WA)から入手できるpSuperである。いくつかの態様においては、ベクターには、2つのプロモーターが含まれ、一方は第1プロモーターの下流に配置され、かつ逆平行で配置される。第1のプロモーターは一方向に転写され、第2のプロモーターは第1のプロモーターとは逆平行の方向に転写され、それにより、相補鎖の発現が生じる。複数の実施形態のなお別のセットにおいては、プロモーターの後ろに、第1の鎖をコードする第1のセグメント、そして第2の鎖をコードする第2のセグメントが続く。第2の鎖は第1の鎖のパリンドロームに相補的である。第1の鎖と第2の鎖の間に、「ヘアピン」として知られている立体配置で、第2の鎖がぐるりと曲がって第1の鎖とアニーリングすることを可能にするリンカー(「スペーサー」と呼ばれる場合もある)としての役割を果たすRNAの部分がある。]
[0073] リンカー部分の使用を含むヘアピンRNAの形成は当該分野で周知である。典型的には、siRNA発現カセットが使用され、ヒトU6、マウスU6、またはヒトH1のようなポリメラーゼIIIプロモーターが用いられる。コード配列は典型的には、短いスペーサーによってその逆相補性アンチセンスsiRNA配列に連結させられた19ヌクレオチドのセンスsiRNA配列である。9ヌクレオチドのスペーサーが典型的であるが、他のスペーサーを設計することができる。さらに、5個〜6個のT’が、しばしば、ポリメラーゼIIIにとっての終結部位となるようにオリゴヌクレオチドの3’末端に付加される。Yuら、Mol Ther 7(2):228−36(2003);Matsukuraら、Nucleic AcidsRes 31(15):e77(2003)もまた参照のこと。]
[0074] siRNA標的は以下のようなヘアピンsiRNAによって標的化され得る。ベクターにより生産される複数の短いヘアピンRNAにより同じ標的を攻撃させる場合には(永久RNAi効果)、間にループを形成する配列を持たせ、さらに、配列の両方の末端に適切な発現ベクターのための適している配列を持たせて、センス鎖とアンチセンス鎖を一列に配置することができる。]
[0075] 本発明のsiRNAは、本明細書中に開示されており、当業者に公知である核酸の生成のための任意の適切な方法(例えば、化学合成および組み換え方法)を使用して作製することができる。オリゴヌクレオチドを、所望される特性(例えば、高いヌクレアーゼ耐性、より強い結合、安定性、または所望されるTm)を提供するために、標準的ではない塩基(例えば、アデニン、シチジン、グアニン、およびウリジン以外)または標準的ではない骨格構造を使用して作製できることは明らかであろう。オリゴヌクレオチドをヌクレアーゼ耐性にするための技術としては、PCT公開番号WO94/12633に記載されている技術が挙げられる。多種多様な有用な修飾されたオリゴヌクレオチドを生成させることができる。これには、ペプチド−核酸(PNA)骨格を持つオリゴヌクレオチド(Nielsenら、1991,Science 254:1497)、あるいは、2’−O−メチルリボヌクレオチド、ホスホロチオエートヌクレオチド、メチルホスホネートヌクレオチド、ホスホトリエステルヌクレオチド、ホスホロチオエートヌクレオチド、ホスホルアミデートが取り込まれているオリゴヌクレオチドが含まれる。]
[0076] 例えば、以下が、PLK2を阻害するために使用することができるsiRNA配列の例であるが、これらに限定されない。「開始位置」は、登録番号NM_006622の配列についていう。]
[0077] 上記siRNAは、「www」の後に「dharmacon.com/DesignCenter/DesignCenterPage.aspx」を入力することによって、siDESIGN(登録商標)センターを使用して設計された。それぞれが二本鎖であり、「TT」突出を持つであろう。]
[0078] さらなる例として、Ambion Kinase siRNA Library(Ambion,Austin,TX)由来のsiRNAを、PLK2を阻害するために使用することができる。例示的な配列が以下に提供される。個々のsiRNAは二本鎖であり、突出として最終的なTT’(両方の末端に存在する)を持つ:]
[0079] iii)アンチセンスポリヌクレオチド
アンチセンスポリヌクレオチドは、センスmRNAに結合して、センスmRNAの翻訳を妨害すること、転写を妨害すること、RNA前駆体のプロセシングもしくは局在化を妨害すること、mRNAの転写を抑制すること、あるいは、いくつかの他の機構を通じて作用することによって、抑制を生じることができる(例えば、Sallengerら、Nature 418,252(2002)を参照のこと)。アンチセンス分子が発現を低下させる特定の機構は重要ではない。典型的には、アンチセンスポリヌクレオチドには、少なくとも7個〜10個、典型的には、20個またはそれ以上のヌクレオチドの一本鎖のアンチセンス配列が含まれる。これらの一本鎖のアンチセンス配列は、本発明のキナーゼ遺伝子のmRNAに由来する配列に特異的にハイブリダイズする。いくつかのアンチセンスポリヌクレオチドは約10個〜約50個のヌクレオチドの長さであるか、または約14個〜約35個のヌクレオチドの長さである。いくつかのアンチセンスポリヌクレオチドは、約100個未満のヌクレオチドまたは約200個未満のヌクレオチドのポリヌクレオチドである。一般に、このアンチセンスポリヌクレオチドは、安定的な二本鎖を形成するには十分に長いが、しかし、所望される場合には、送達様式に応じて、インビボで投与するために十分に短くあるべきである。標的配列に対する特異的ハイブリダイゼーションに必要なポリヌクレオチドの最小長さは、いくつかの要因、例えば、中でも特に、G/C含量、(存在する場合には)不適合塩基の位置、標的ポリヌクレオチドの集団と比較した配列の独自性の程度、およびポリヌクレオチドの化学的性質(例えばメチルホスホネート骨格、ペプチド核酸、ホスホロチオエート)に依存する。]
[0080] iv)リボザイム
リボザイムは、酵素として作用し、そして特定の部位で他のRNA分子を切断するように操作することができるRNA分子である。リボザイム自体はこのプロセスでは消費されず、多コピーのmRNA標的分子を切断するように触媒的に作用することができる。トランスで標的RNAを切断するリボザイムの設計についての一般的な原則は、Haseloff & Gerlach,(1988)Nature 334:585−591、およびHollenbeck,(1987)Nature 328:596−603、および米国特許第5,496,698号に記載されている。リボザイムには、通常は、本発明のキナーゼをコードする遺伝子の転写物上の2つの部位(標的サブサイト)と、隣接する複数のセグメントの間の触媒領域とに相補性を示し、これらに結合する、2つの隣接するセグメントが含まれる。この隣接するセグメントは、通常は5ヌクレオチド〜9ヌクレオチドの長さであり、最適であるのは6ヌクレオチド〜8ヌクレオチドの長さである。リボザイムの触媒領域は、一般的には、約22ヌクレオチドの長さである。mRNA標的には、一般式NUN、好ましくは、GUCを持つ、標的サブサイトの間にあるコンセンサスな切断部位が含まれる。(Kashani−Sabet and Scanlon,(1995)Cancer Gene Therapy 2:213−223;Perrimanら、(1992)Gene(Amst.)113:157−163;Ruffnerら、(1990)Biochemistry 29:10695−10702);Birikhら、(1997)Eur.J.Biochem.245:1−16;Perrealtら、(1991)Biochemistry 30:4020−4025)。リボザイムの特異性は、標的サブサイト、したがって、そのようなサブサイトに相補的であるリボザイムの隣接するセグメントの選択によって制御することができる。リボザイムは、RNA分子として、または複製可能なベクターの構成要素としてのリボザイムをコードするDNAの形態で、あるいは、以下に記載されるような複製不可能な形態でのいずれかで、送達することができる。]
[0081] 標的キナーゼ遺伝子の発現はまた、標的遺伝子の調節領域(すなわち、標的遺伝子プロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的な配列を有している核酸を送達して、体内の標的細胞中での標的遺伝子の転写を妨げる三重へリックス構造を形成させることによって、低下させることもできる。一般的には、Helene,(1991),Anticancer Drug Des.,6(6):569−584;Heleneら、(1992),Ann.N.Y.Acad.Sci,60:27−36;およびMaher,(1992),Bioassays 14(12):807−815を参照のこと。]
[0082] v)siRNAおよび他の阻害性核酸の投与
脳は本発明のキナーゼ阻害剤の治療標的である。治療用ポリヌクレオチド(例えば、siRNA、リボザイム、およびアンチセンスポリヌクレオチド)は、多数の方法で投与することができる。導入方法としては、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路、および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。化合物は、例えば、任意の便利な経路によって(例えば、輸液によってもしくはボーラス注射によって、上皮内層もしくは粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸および腸の粘膜など)を介する吸収によって)投与することができ、また、他の生物学的に活性な物質と一緒に投与することもできる。一般的には、治療用ポリヌクレオチドは、脳への送達を促進する担体とともに離れた位置に(例えば、i.v.注射によって)投与することができるか、あるいは、脳に直接送達することができる。]
[0083] 脳への直接の投与のためには、siRNA(すなわち、siRNAを含む薬学的組成物)を、任意の適切な経路によって投与することができる。これには、脳室内注射および髄膜注射が含まれる。脳室内注射は、(例えば、Ommayaレザーバーのようなレザーバーに接続されている)脳室内カテーテル、病変部位への直接の注射もしくは潅流、脳の動脈系への注射によって、あるいは、血液−脳関門の化学的または浸透圧による開口によって、容易になり得る。]
[0084] 1つのアプローチでは、治療用ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)が、ペプチド結合体として送達される。Kumarらは、神経系に優先的に感染する神経向性ウイルス(例えば、狂犬病ウイルス)が脳に浸潤できるという事実を利用した。狂犬病ウイルスは、その脂質エンベロープ上の糖タンパク質を通じてこれを行う。siRNAを脳の中の神経細胞に移動させるために、Kumarらは、ニューロンによって発現されたアセチルコリン受容体に選択的に結合する、狂犬病ウイルスの糖タンパク質(RVG)エンベロープに由来する29残基のペプチドを同定した。これらを、siRNAに結合する9個のアルギニン残基の配列を持つペプチドと融合させた。このペプチドに結合させたsiRNAをマウスに静脈内注射した後、彼らは、ペプチドが、脳へのsiRNAの経血管送達ができただけでなく、十分な遺伝子のサイレンシングもまたできたことを見出した(Kumarら、(2007)Nature 448:39−43)。]
[0085] 治療用ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)は、リポソームと標的化モノクローナル抗体システムを使用して送達することができる。Pardridgeは、上皮成長因子に対して惹起させられた、モノクローナル抗体に結合させられた化学修飾されたリポソームが、マウスの脳に浸潤できることを報告した。短いヘアピンRNA(shRNA)をコードするプラスミドDNAが、ペグ化免疫リポソーム(PIL)を用いた静脈内投与によって脳に送達された。プラスミドDNAがリポソームにカプセル化される。これは、ペグ化され、受容体を特異的に標的化するモノクローナル抗体と結合させられる。PILを用いた静脈内RNAiにより、ヒトの上皮成長因子受容体の90%のノックダウンが可能である。これにより、頭蓋内に脳のガンを持つマウスの生存期間の90%の延長が生じた(Pardridge,(2007)Adv.Drug Deliv.Rev.59:141−152)。]
[0086] 同様に、Boadoにより、脳にshRNAを送達するための有効な送達システムとしての「Trojan Horse Liposome」(THL)技術の使用が開示されている。THLの組織標的特異性は、それぞれ、BBBおよび脳の細胞膜の両方に存在する特異的な内因性の受容体(すなわち、インシュリンおよびトランスフェリン受容体)に結合するペプチド模倣物であるモノクローナル抗体に対する、リポソーム中のPEG残基のおよそ1%の結合によってもたらされる。(Boado(2007)Pharm.Res.24:1772−1787)。]
[0087] 治療用ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)は、受容体特異的抗体送達システムおよびアビジン−ビオチン技術の併用によって送達することができる。siRNAは、標的化モノクローナル抗体とストレプトアビジンとの結合体の生産と同時に、センス鎖のいずれかの末端がモノビオチン化された。ルシフェラーゼ遺伝子で恒久的にトランスフェクトされたラットの膠細胞が、成体ラットの脳に移植された。頭蓋内腫瘍の形成後、ラットは、ビオチン−ストレプトアビジンリンカーによってトランスフェリン受容体抗体に結合させられたビオチン化siRNAの1回の静脈内注射で処置された。siRNAの静脈内投与によっては、インビボで脳室内の脳のガンにおいて、ルシフェラーゼ遺伝子の発現の69%〜81%の低下が生じた(Xiaら、(2007)Pharm.Res.24:2309−2316)。]
[0088] 治療用ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)は、定位手術または注射によって送達され得る。DavidsonとBoudreauによって、siRNAを脳神経外科的な定位固定の方法を使用して脳の中に送達することができることが彼らの論文の中でまとめられ、そして特定の遺伝子の転写の減少により、神経疾患の症状が改善したことが示された(Davidson and Boudreau,(2007)Neuron 53:781−788)。]
[0089] Xiaらによって、小脳内注射に注射されると、短いヘアピンRNAを発現する組み換え体アデノ随伴ウイルスベクター(これは、一旦発現されるとsiRNAになるようにプロセシングされる)が、運動協調性を改善し、小脳の形態を回復させ、そして1型脊髄小脳失調のマウスのプルキンエ細胞中の特徴的なアタキシン−1封入体を回復させることが報告されている(Xiaら、(2004)Nature Med.10:816−820)。]
[0090] さらに、DiFigliaらによっては、ヒトのハンチントンmRNAを標的化する、コレステロールに結合させられたsiRNAを線条体内に注射することが報告されている。著者らは、siRNAの成体マウスの線条体への1回の投与によって遺伝子のサイレンシングが生じ、神経病変が弱毒化され、そしてハンチントン病の迅速に発症するウイルス性のトランスジェニックマウスモデルにおいて観察された異常な行動的表現形が遅らせられたことを見出した(DiFigliaら(2007)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:17204−17209)。そのような方法によっては、注射部位の周囲だけに局在化させられた送達が生じ、これには、脳内での広い作用は伴わないことに留意されたい。]
[0091] Singerらによっては、大量のヒトのβ−アミロイドを生産し、そしてその脳にいくつものプラークがある、トランスジェニックマウスの脳細胞にsiRNAを送達するために、修飾されたレンチウイルスベクターを使用することが開示されている。彼らは、β−セクレターゼsiRNAのレンチウイルスベクターによる送達によって、インビボでは、アミロイド前駆体タンパク質の切断と神経変性が特異的に減少することを見出し、そしてこのアプローチがアルツハイマー病の処置に治療的価値がある可能性があることを示した(Singerら(2005)Nature Neurosci.8:1343−1349;Orlacchioら(2007)Mini.Rev.Med.Chem.7:1 166−1176にまとめられている)。]
[0092] Koutsilieriらによっては、siRNAの分野の文献がまとめられ、疾患を誘導するmRNAの対立遺伝子特異的変性を目指す様々なsiRNA標的ストラテジーと、アルツハイマー病(AD)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、ハンチントン病(HD)、および脊髄小脳失調(SCA1)を含む神経変性疾患の動物モデルにおけるその適用が開示されている(Koutsilieriら(2007)J.Neural Transm Suppl.(72):43−49)。]
[0093] Hassaniらによっては、陽イオン性脂質とポリエチレンイミン(PEI)系ポリプレックス(polyplexes)によって、新生マウスの脳へのsiRNAの効率的な送達がもたらされ、わずかピコモルレベルのsiRNAによって、外因性遺伝子の>80%の阻害が生じたことが明らかにされている(Hassaniら(2005)J.Gene Med.7:198−207)。]
[0094] Katebらは、脳のガンの処置のために脳に薬物を送達するための方法として、ナノテクノロジーを使用した。特に、著者らにより、Multi−Walled Carbon Nanotubes(MWCNTs)の、siRNAを輸送するためのナノベクターとしての使用が開示されている(Katebら(2007)Neuroimage 37 Suppl 1:S9−17)。]
[0095] 治療用ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)は、いずれかの治療効果を改善するかまたは高めるために、他の薬剤と組み合わせて使用することができる。このプロセスには、両方の薬剤を含む1つの組成物または薬学的処方物のいずれかとして、両方の薬剤を同時に患者に投与する工程が含まれ得るか、あるいは、2つの異なる組成物または処方物を投与する(この場合、一方の組成物には本発明のsiRNAが含まれ、そして他方には第2の薬剤(単数または複数)が含まれる)ことによる。siRNA治療にはまた、数分から数週間の範囲の間隔で他の薬剤による処置が先行する場合も、また後に続けられる場合もある。]
[0096] ポリヌクレオチドは、徐放システムを介して送達することができる。一例として、ポンプを使用することができる(Langer、前記;Sefton,1987,CRCCrit.Ref.Biomed.Eng.14:201−240;Buchwaldら、1980,Surgery 88:507−516;Saudekら、1989,N.Engl.J.Med.321:574−579)。あるいは、ポリマー物質を用いることも可能である(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise編、CRC Press,Boca Raton,Fla,1974;Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball編、Wiley,N.Y.,1984;Ranger and Peppas,1983,Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61;Levyら、1985,Science 228:190−192;Duringら、1989,Ann.Neurol.25:351−356;Howardら、1989,J.Neurosurg.71:858−863)。さらに別の態様においては、治療標的、すなわち脳の近くに徐放システムを配置することができる。これによると、全身用量のうちのごく少量しか必要としない(例えばGoodson,1984:Medical Applications of Controlled Release,前出,第2巻,pp.115−138)。他の徐放システムが、Langer(1990,Science 249:1527−1533)によってまとめて論じられている。]
[0097] 他のアプローチとしては、例えば、ウイルス送達システムおよび/または非ウイルス送達システムの使用による、様々な輸送システムおよび担体システムの使用を挙げることができる。例えば、siRNAを、病原性を引き起こすことなく媒体として作用するように修飾されたウイルスの中で、脳に導入することができる。ウイルスは、例えば、アデノウイルス、鶏痘ウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルス、または神経向性ウイルス(例えば、HIV、単純ヘルペスウイルス、フラビウイルス、もしくは狂犬病ウイルス)であり得る(Liら、MethodsMol.Biol.309:261−272(2005);Davidsonら、Neuron 53:781−788(2007);Xiaら、Nature Med 10:816−820(2004);Kumarら、Nature 448:39−43(2007);米国特許第6,344,445号、同第6,924,144号、同第6,521,457号)。さらに、例えば、Kaplittら、米国特許第6,180,613号およびDavidson,WO04/013280に記載されているような遺伝子治療アプローチを、脳の中で核酸分子を発現させるために使用することができる。]
[0098] 以下のような様々な非ウイルス送達システムが公知であり、治療用ポリヌクレオチド(例えば、siRNA)を脳に投与するために使用することができる:例えば、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセルへのカプセル化、イオントフォレシスによるかまたは他の媒体(例えば、生分解性ポリマー、ヒドロゲル、シクロデキストリン)への取り込みによる(例えば、Gonzalezら、1999,Bioconjugate Chem.,10,1068−1074;Wangら、PCT国際公開番号WO03/47518および同WO03/46185を参照のこと)、ポリ(乳−コ−グリコール)酸(PLGA)およびPLCAマイクロスフェア(例えば、米国特許第6,447,796号および米国特許出願公開番号US 2002130430を参照のこと)、生分解性ナノカプセルおよび生体接着性マイクロスフェア、あるいは、タンパク質性のベクターによるか(O’Hare and Normand,PCT国際公開番号WO00/53722)または結合体の使用による。例えば、短いヘアピンRNAをカプセル化している化学修飾されたリポソームは、血液脳関門および脳の細胞膜上に存在する特異的な内因性受容体(例えば、インシュリンおよびトランスフェリン)に特異的なモノクローナル抗体に結合させることができる(Boado,Pharm.Res.24(9):1772−1787(2007)を参照のこと)。さらなる例として、siRNA二本鎖を、受容体特異的抗体送達システムおよびアビジン−ビオチン技術の併用によって送達することができる。siRNAは、標的化モノクローナル抗体とストレプトアビジンとの結合体の生産と同時に、モノビオチン化させることができる(Xiaら、Pharm Res.24(12):2309−16(2007)を参照のこと)。インビボで血漿膜を横切ってsiRNAを送達するための他の方法としては、コレステロールに結合させられたsiRNAのような化学修飾されたsiRNAが挙げられる(DiFigliaら、Proc Natl Acad Sci USA.104(43):17204−9(2007);Wolfrumら、Nature Biotech.25(10):1149−1157(2007);Soutschekら、Nature 432:173−178(2003)を参照のこと)。]
[0099] C.亜鉛フィンガータンパク質
亜鉛フィンガータンパク質は、例えば、PLK2を含む公知の配列のキナーゼ遺伝子の中の任意の所望される標的部位に結合するように操作するか、または選択することができる。これらのタンパク質のうちの1つのクラス(C2H2クラス)を特徴づける例示的なモチーフは、−Cys−(X)2−4−Cys−(X)12−His−(X)3−5−HiS(配列番号21)(式中、Xは任意のアミノ酸である)である。1つのフィンガードメインは約30アミノ酸の長さであり、いくつかの構造試験により、これには、2つの不変のヒスチジン残基と2つの不変のシステイン残基が亜鉛を介して配位(coordinate)させられたβターンの中に含まれているαへリックスが含まれていることが明らかにされた。いくつかの方法では、標的部位は、プロモーターまたはエンハンサーの中にある。言い換えると、標的部位は構造遺伝子の中にある。いくつかの方法では、亜鉛フィンガータンパク質は、転写リプレッサー(例えば、ヒトKOX−1タンパク質由来のKRABリプレッションドメイン)に連結させられる(Thiesenら、New Biologist 2,363−374(1990);Margolinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,4509−4513(1994);Pengueら、Nucl.AcidsRes.22:2908−2914(1994);Witzgallら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,4514−4518(1994))。いくつかの方法では、亜鉛フィンガータンパク質は、VIP16のような転写活性化因子に連結させられる。亜鉛フィンガータンパク質はまた、所望される遺伝子の発現を活性化させるためにも使用することができる。亜鉛フィンガータンパク質による標的化に適している標的部位を選択するための方法、および選択された標的部位に結合するように亜鉛フィンガータンパク質を設計するための方法は、WO00/00388に記載されている。ファージディスプレイを使用して標的に結合するように亜鉛フィンガータンパク質を選択するための方法は、EP.95908614.1に記載されている。亜鉛フィンガータンパク質の設計に使用される標的部位は、典型的には、9ヌクレオチド〜19ヌクレオチドの程度である。]
[0100] 例えば、細胞膜を横切って所望される核酸を移動させる能力を有しているタンパク質が記載されている。典型的には、そのようなタンパク質は、膜移動担体として作用する能力がある両親媒性または疎水性のサブ配列を持つ。例えば、ホメオドメインタンパク質は、細胞膜を横切って移動する能力がある。ホメオドメインタンパク質の最も短いインターナライズできるペプチドであるアンテナペディアは、このタンパク質の第3のへリックス(アミノ酸部位43〜58位)であることが明らかにされている(例えば、Prochiantz,Current Opinion in Neurobiology 6:629−634(1996)を参照のこと)。別のサブ配列である、シグナルペプチドのh(疎水性)ドメインは、同様の細胞膜移動特性を持つことが明らかにされている(例えば、Linら、J.Biol.Chem.270:14255−14258(1995)を参照のこと)。そのようなサブ配列を用いて、細胞膜を横切ってオリゴヌクレオチドを移動させることができる。オリゴヌクレオチドは、そのような配列を用いて都合が良いように誘導体化させることができる。例えば、リンカーを用いて、オリゴヌクレオチドと移行配列を連結することができる。例えばペプチドリンカーまたは任意の他の適切な化学的リンカーなど、任意の適切なリンカーを用いることができる。]
[0101] D.抗体
キナーゼ活性は、本発明のキナーゼに特異的に結合する抗キナーゼ(例えば、抗PLK2)抗体(完全な抗体とその結合断片(例えば、Fab、Fv)の両方)を投与することによって低下させることができる。通常は、抗体はモノクローナル抗体であるが、ポリクローナル抗体もまた、組み換えによって発現させることができる(例えば、米国特許第6,555,310号を参照のこと)。発現させることができる抗体の例としては、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ベニヤ抗体(veneered antibody)、およびヒト抗体が挙げられる。キメラ抗体は、その軽鎖遺伝子と重鎖遺伝子が、通常は、異なる種に属している免疫グロブリン遺伝子セグメントから遺伝子操作によって構築されている抗体である(例えば、Boyceら、Annals of Oncology 14:520−535(2003)を参照のこと)。例えば、マウスのモノクローナル抗体由来の遺伝子の可変(V)セグメントは、ヒトの定常(C)セグメントに連結させることができる。したがって、典型的なキメラ抗体は、マウス抗体由来のVドメインまたは抗原結合ドメインと、ヒト抗体由来のCドメインまたはエフェクタードメインからなるハイブリッドタンパク質である。ヒト化抗体は、ヒト抗体(アクセプター抗体と呼ばれる)に実質的に由来する可変領域フレームワーク残基と、マウス抗体(ドナー免疫グロブリンと呼ばれる)に実質的に由来する相補性決定領域を持つ。Queenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989)、ならびに、WO90/07861、米国特許第5,693,762号、同第5,693,761号、同第5,585,089号、同第5,530,101号、およびWinter、米国特許第5,225,539号を参照のこと。定常領域(単数または複数)は、存在する場合には、これもまた、ヒト免疫グロブリンに実質的に由来するか、またはヒト免疫グロブリンに完全に由来する。抗体は、中でも特に、従来のハイブリドーマアプローチ、ファージディスプレイ(例えば、Dowerら、WO91/17271、およびMcCaffertyら、WO92/01047を参照のこと)、ヒトの免疫系を持つトランスジェニックマウスの使用(Lonbergら、WO93/12227(1993))によって得ることができる。免疫グロブリン鎖をコードする核酸は、抗体を生産するハイブリドーマまたは細胞株から、あるいは、公開されている文献の中の免疫グロブリンの核酸配列またはアミノ酸配列に基づいて得ることができる。]
[0102] 抗体は、静脈内注射によって投与することができる。注射された抗体の一部は、血液−脳関門を越えるであろう。あるいは、抗体は、脳に直接(例えば、脳室内注射または髄膜注射)によって直接投与することもできる。抗体は、エンドサイトーシスによってシヌクレインを発現する細胞によってインターナライズされ得る。あるいは、抗体は、細胞膜を横切る輸送を容易にする担体部分に連結させられる場合もある。]
[0103] 1つの実施形態では、イントラボディーがPLK2活性を低下させるために使用される。用語「イントラボディー(intrabody)」または「イントラボディー(intrabodies)」は、細胞内の標的に指向された、細胞内で発現された抗体構築物、通常は、単鎖Fv抗体をいう。Namら、(2002)MethodsMol Biol.193:301;der Maurrら(2002)J.Biol Chem Nov 22;277(47):45075;Cohen(2002)Methods Mol Biol 178:367。scFv遺伝子を細胞内に導入することができ、ここでは、scFvタンパク質の発現によってその標的(例えば、PLK2)の特性を調節することができ、時には、タンパク質機能が失われ、表現形のノックアウトが生じる。実際、scFvイントラボディーを、細胞質の中で発現させることができ、これを、これが細胞内タンパク質を標的化して特異的な生物学的作用を誘発することができる任意の細胞区画に向けさせることができる。したがって、イントラボディーにより、PLK2のようなタンパク質の活性をブロックするかまたは調節するための効果的な手段が提供される。]
[0104] E.活性を調節するためのキナーゼ阻害剤
上記で議論された生物学的分子に加えて、低分子化合物を、キナーゼの発現または活性を調節する(通常は阻害する)ために使用することができる。以下で議論されるように、既知のキナーゼ阻害剤は、所望される標的特異性および他の特性についてスクリーニングすることができ、そしてさらに別の阻害剤を、標的特異性に基づいて同定することができる。PLK2またはGRK6が、阻害される好ましいキナーゼである。なぜならこれらは、α−シヌクレインを直接リン酸化することについての候補であるからである。PLK2が特に好ましいキナーゼである。なぜなら、これは、GRK6または本明細書中で試験された他のキナーゼよりもはるかに高いレベルにまでα−シヌクレインをリン酸化することが示されているからである。]
[0105] 他のキナーゼ標的としては、APEG1、CDC7L1、MET GRK1、GRK2、GRK6、IKBKB、CKII、およびGRK7が挙げられ、これらもまた、阻害される好ましいキナーゼである。なぜなら、これらはおそらく、直接のキナーゼ(単数または複数)の間接的な活性化因子であるからである。PRKG1、MAPK13、およびGAKが、レヴィー小体病における活性化についての好ましいキナーゼである。なぜなら、これらは、α−シヌクレインのリン酸化のネガティブな調節因子であるからである。あるいは、これらのキナーゼ自体、または類似する活性を持つそれらの断片もしくは模倣物を、α−シヌクレインのリン酸化の阻害剤として直接使用することができる。シンフィリンは、α−シヌクレインのリン酸化の阻害のための別の治療標的として使用することができる。例えば、シンフィリンは、α−シヌクレインとPLK−2の発現、ならびに同定されたシンフィリンの阻害剤を含むアッセイに加えることができる。]
[0106] キナーゼの発現または活性を調節する能力についてスクリーニングされる化合物としては、セクションIVに記載される発現の調節因子が挙げられる。これらの化合物にはまた、キナーゼ阻害剤の多くの公知の例が含まれ、これらのうちのいくつかは、治療的用途または臨床試験において、通常は、ガンの処置についてすでに承認されている。リード構造としては、キナゾリン、ピリド[d]−およびピリミドール[d]ピリミジン、ピラゾロ[d]−ピリミジエン、ピロロ[d]ピリミジン、フェニルアミノ−ピリミジン(pheylamino−pyrimidine)、1−オキソ−3−アリール−1H−インデン−2−カルボン酸誘導体、および置換されたインドリン−2−オン、ならびにスタウロスポリンのような天然の産物が挙げられる(Traxlerら、2001,Medicinal Research Reviews 21:499−512を参照のこと)。そのような化合物のいくつかはCalbiochem−Novabiochem Corp.(La Jolla,CA)から市販されており、これには、H89、Y27632、AT877(塩酸ファスジル)、ロットレリン、KN62、U0123、PD184352、PD98059、SB203580、SB202190、ワートマニン、Li+、Ro 318220、ケレリスレイン(chelerythrein)、および10−[3−(l−ピペラジニル)プロピル]−2−トリフルオロメチル−フェノチアジン(Davies,Biochem.J.351,95−105(2000)を参照のこと)が含まれる。現在臨床試験の段階にある他の化合物としては、STI571(GlivecTM、フェニルアミノ−ピリミジン誘導体)(Novartis)、ZD1839(イレッサ(Iressa))(AstraZeneca)、OSI−774(Roche/OSI)、PKI166(Novartis)、CI1033(Pfizer/Warner−Lambert)、EKB−569(Wyeth−Ayerst)、SU5416(SUGEN)、PTK787/ZK224584、アニリン−フタラジン誘導体(Novartis/Schering AG)、SU6668(Sugen)、ZD6474(AstraZeneca)、およびCEP2583(Cephalon)が挙げられる。カベオリン−1は、GRKキナーゼの活性を調節することが公知である化合物の一例である。PLK2/SNKキナーゼの活性を調節することが公知である化合物の例としては、hVPS18(ヒトのvacuolar protein sorting 18)のRING−H2ドメインと、カルシウム−およびインテグリン結合タンパク質CIBが挙げられる。]
[0107] 特定の実施形態では、治療薬は低分子であり、これは、チアゾリドン、キナゾリン、ピリミジン(例えば、ピリド[d]−ピリミジン、ピリミドール[d]ピリミジン、ピラゾロ[d]−ピリミジエン、ピロロ[d]ピリミジン、フェニルアミノ−ピリミジン、またはフェニルアミノ−ピリミジン誘導体);インダゾール−ピリジン誘導体、カルボン酸誘導体(例えば、1−オキソ−3−アリール−1H−インデン−2−カルボン酸誘導体)、置換されたインドリン−2−オン、アニリン−フタラジン誘導体;キノリノン誘導体、ベンズチアゾール−3オキサイド化合物、アザインダゾール化合物、またはジヒドロプテリジノンである。特定の実施形態では、治療薬は、US 20070203143;US 2007/0179177;US 2007/0135387;US 2007/0010565;US 2007/0037862;US 2007/0010566;US 2006/0074119;US 2006/0079503;US 2006/0223833;US 2005/0014761;US 2004/0176380;US 2006/0040997;US 6,861,422;US 2005/0014760;US 2006/0025411;US 2004/0176380;US 2005/0014761;US 2007/0203143;US 2007/0072833;US 2007/0135387、またはWO03087095に記載されている、低分子プロテインキナーゼ阻害剤である。上記刊行物はそれぞれが参考として本明細書に援用される。]
[0108] 化合物は合成のものである場合も、また、例えば、海洋性微生物、藻類、植物、および真菌のような天然の供給源から得ることもできる。試験することができる他の化合物としては、α−シヌクレインと相互作用することが公知である化合物(例えば、シンフィリン)が挙げられる。あるいは、化合物は、ペプチドまたは低分子を含む薬剤のコンビナトリアルライブラリー由来のものであっても、また、産業的に(例えば、化学工業によって、製薬産業によって、環境産業によって、農業によって、漁業によって、化粧品産業によって、医薬品業界によって、およびバイオテクノロジー産業によって)合成された化合物の既存のレパートリーに由来するものであってもよい。コンビナトリアルライブラリーは、段階的様式で合成することができる多くのタイプの化合物について生成させることができる。そのような化合物としては、ポリペプチド、タンパク質、核酸、β−ターン模倣物、多糖類、リン脂質、ホルモン、プロスタグランジン、ステロイド、芳香族化合物、複素環化合物、ベンゾジアゼピン、オリゴマーN−置換グリシンおよびオリゴカルバメートが挙げられる。化合物の大きなコンビナトリアルライブラリーを、Affymax WO95/12608、Affymax WO93/06121、Columbia University WO94/08051、Pharmacopeia WO95/35503、およびScripps WO95/30642(これらのそれぞれが、全ての目的のためにそれらの全体が参考として本明細書に援用される)に記載されているコードされる合成ライブラリー(encoded synthetic libraries)(ESL)法によって構築することができる。ペプチドライブラリーはまた、ファージディスプレイ法によっても作製することができる。例えば、Devlin,WO91/18980を参照のこと。スクリーニングされる化合物はまた、例えば、National Cancer Institute’s(NCI)Natural Product Repository,Bethesda,MD,the NCI Open Synthetic Compound Collection,Bethesda,MD,NCI’s Developmental Therapeutics Programなどを含む行政機関である供給源または個人的な供給源からも得ることができる。化合物としては、例えば、医薬品、治療薬、環境因子、農業的な因子、または産業的な因子、汚染物質、薬用化粧品、薬物、有機化合物、脂質、グルココルチコイド、抗生物質、ペプチド、タンパク質、糖類、炭水化物、およびキメラ分子を挙げることができる。]
[0109] 上記で議論されるように、PLK2を優先的に阻害するキナーゼ阻害剤は特に有用である。以下の実施例13〜16に示されるように、本発明者らは、ラットの腹側中脳およびマウスの皮質細胞培養物、ならびに他の細胞中でのα−シヌクレインのリン酸化のレベルについて、いくつかのキナーゼ阻害剤の影響をアッセイした。]
[0110] 本発明にしたがって使用される例示的な化合物は、以下の構造を有している化合物BI2536である:]
[0111] 以下の実施例で明らかにされるように、BI2536(4−[[(7r)−8−シクロペンチル−7−エチル−5,6,7,8−テトラヒドロ−5−メチル−6−オキソ−2−プテリジニル]アミノ]−3−メトキシ−n−(1−メチル−4−ピペリジニル)−ベンズアミド;ELN−481574−2とも呼ばれる)は、様々な細胞のタイプの中でα−シヌクレインのリン酸化を減少させた。BI2536は、PLK1、PLK2、およびPLK3を阻害し(Steegmaierら、2007,Current Biology,17:316−322を参照のこと)、そしてPLK4は阻害しない(Johnsonら、2007,Biochemistry 46:9551−9563)。Steegmaierらによって、PLK1については0.83nMのIC50、PLK2については3.5nM、そしてPLK3については9nMのIC50が報告されている。以下の実施例15に記載される試験では、BI2536が、PLK2(IC50 11nM)については16倍の選択性、そしてPLK3(IC50 14nM)については13倍の選択性があることが示された。BI2536は、カテゴリーIV PLK2特異性(PLK2活性を阻害し、そしてPLK4に対しては効果がないか、または効果が低い)を有しており、そしてパーキンソン病の治療薬の候補である。]
[0112] したがって、1つの態様では、本発明により、α−シヌクレインのリン酸化が減少するように、細胞を、細胞中のPLK2活性を低下させる量のBI2536と接触させることにより、哺乳動物細胞中でのα−シヌクレインのリン酸化を阻害するための方法が提供される。関連する態様では、本発明により、治療有効量のBI2536を投与することによる、パーキンソン病と診断された患者を処置する方法が提供される。]
[0113] 米国特許第6,861,422号(参考として本明細書に援用される)には、BI2536と、構造的に関係があるジヒドロプテリジノンキナーゼ阻害剤が記載されている。PLK2を阻害するジヒドロプテリジノン化合物は、シヌクレインのリン酸化の阻害に有用である。]
[0114] 本発明にしたがって使用される別の例示的な化合物は、以下の構造を有している化合物ELN−481080である:]
[0115] McInnesら、2006,Current Topics in Medicinal Chemistry 5:181−97(化合物8)を参照のこと。参考として本明細書に援用されるUS 2006/0040997,「Benzthiazole−3 oxides useful for the treatment of proliferative disorders」もまた参照のこと。以下の実施例14を参照のこと。]
[0116] polo様キナーゼのいくつかの阻害剤が、Johnsonら、2007,「Pharmacological and functional comparison of the polo−like kinase family:insight into inhibitor and substrate specificity」Biochemistry 46:9551−63に記載されている。その実験で特性決定されたもののうちのいくつかが、PLK2を優先的に阻害し、これらを治療薬として使用することができる。]
[0117] 例えば、CHIR−258(3)は、t(4;14)多発性骨髄腫の処置のために開発された複数標的成長因子キナーゼ阻害剤である(Trudelら、2005,Blood.l05:2941−8)。]
[0118] PLK1、PLK2、PLK3、およびPLK4に対するCHIR−258のKi値は、それぞれ、>20uM、0.85uM、>20uM、および1.4uMであり、これらは、CHR−258がVI型阻害剤である(PLK2活性を阻害し、そしてPLK1、PLK3、およびPLK4に対しては効果が低い)ことを意味している。CHIR−258は受容体チロシンキナーゼの阻害剤であるが、この化合物がパーキンソン病の処置および予防について許容される治療指数と、臨床的に許容される副作用のプロフィールを有しているかどうかを決定するために、副作用のプロフィールの認可試験、脳への標的化された送達、および/または特定の処置レジュメを調べることができる。CHIR−258および関連するキノリノン誘導体は、参考として本明細書に援用されるWO03087095に記載されている。]
[0119] スニチニブ(SU11248)(4)は、Johnsonら、2007の実験に基づくと、IV型阻害剤の一例である(PLK2活性を阻害し、PLK1またはPLK3に対しては効果が低い)。スニチニブは、難治性であるかまたはイマチニブ(Gleevec)に対して不耐性である進行した腎細胞ガンおよび消化管間葉系腫瘍の処置について承認されている、FLT3受容体チロシンキナーゼ(RTK)の阻害剤として同定された。O’Farrellら、2003,Blood 101:3597−605。]
[0120] 5−(5,6−ジメトキシ−1H−ベンズイミダゾール−1−イル)−3−{[2−(トリフルオロメチル)−ベンジル]オキシ}チオフェン−2−カルボキサミド(5)は、III型の薬剤の一例である(PLK2活性を阻害し、PLK4に対しては効果が低い)。この化合物は、新生物の処置のためのPLK1およびPLK3の選択的チオフェンベンズイミダゾールATP競合阻害剤として最初に同定された。Lansingら、2007,Mol Cancer Ther.6:450−9。PLKの他の阻害剤が記載されている、参考として本明細書に援用されるUS 20060074119もまた参照のこと。]
[0121] 化合物6と化合物7は、抗腫瘍薬として提案されているプロテインキナーゼB/Aktの、インダゾール−ピリジンをベースとする阻害剤である(Woodsら、2006,Bioorg Med Chem.14:6832−46を参照のこと)。それぞれが、PLK1またはPLK3についてのKiよりも、PLK2について低いKiを持ち(IV型阻害剤)、そしてパーキンソン病の処置のために使用することができる。]
[0122] いくつかの実施形態では、薬剤は、自然界に存在している薬剤である。いくつかの実施形態では、薬剤は、4000未満の分子量を持ち、多くの場合は3000未満、多くの場合は2000未満、通常は1000未満、そして多くの場合には500未満の分子量を持つ。]
[0123] 特定の実施形態では、治療薬は、チアゾリドン以外の低分子である。特定の実施形態では、治療薬はX以外の低分子であり、ここでは、Xは、以下のうちの1つであるか、あるいは以下の1つ以上から別々に選択される:(i)チアゾリドン、(ii)キナゾリン、(iii)ピリミジン、(iv)ピリド[d]−ピリミジン、(v)ピリミドール[d]ピリミジン、(vi)ピラゾロ[d]−ピリミジエン、(vii)ピロロ[d]ピリミジン、(viii)フェニルアミノ−ピリミジン、(ix)フェニルアミノ−ピリミジン誘導体、(x)インダゾール−ピリジン誘導体、(xi)カルボン酸誘導体、(xii)1−オキソ−3−アリール−1H−インデン−2−カルボン酸誘導体、(xiii)置換されたインドリン−2−オン、(xiv)アニリン−フタラジン誘導体;(xv)キノリノン誘導体、(xvi)チアゾリジノン化合物、(xvii)ベンズチアゾール−3オキサイド、(xviii)ジヒドロプテリジノン、または(xix)アザインダゾール化合物。]
[0124] 特定の実施形態では、治療薬はUS 2007/0179177に記載されている化合物ではないという条件で、低分子である。特定の実施形態では、治療薬は、US 2007/0010565に記載されている化合物ではないという条件で、低分子である。特定の実施形態では、治療薬は、US 2007/0037862に記載されている化合物ではないという条件で、低分子である。特定の実施形態では、治療薬は、2007/0010566に記載されている化合物ではないという条件で、低分子である。特定の実施形態では、治療薬は、2006/0079503に記載されている化合物ではないという条件で、低分子である。特定の実施形態では、治療薬は、US 2006/0223833に記載されている化合物ではないという条件で、低分子である。上記刊行物はそれぞれ、参考として本明細書に援用される。]
[0125] VI.処置方法
本発明により、レヴィー小体病を、そのような疾患に罹患しているかまたはそのような疾患のリスクがある患者において、予防または処置するいくつかの方法が提供される。治療薬には、α−シヌクレインのリン酸化を阻害する、および/またはα−シヌクレインの全レベルを低下させる上記薬剤のうちの任意のものが含まれる。]
[0126] 以下の実施例では、PLK2がシヌクレインキナーゼであることの強い証拠が提供される。したがって、特定の態様では、本発明により、LB疾患の処置または予防を行う方法が提供される。この方法は、この疾患に罹患しているかまたはこの疾患のリスクがある患者に対して、PLK2の活性または発現を抑制するために有効な薬剤の有効なレジュメを投与することによる。薬剤が、PLK2に対して高いレベルの特異性を示すことが好ましい。]
[0127] 処置に反応しやすい患者としては、LBDの疾患のリスクがあるが、症状を示していない個体、ならびに、現在症状を示している患者が挙げられる。したがって、本発明の方法は、LBDについて遺伝的リスクがあることが明らかである個体に対して予防的に投与することができる。そのような個体としては、この疾患を経験した血縁者がいる個体、および遺伝的マーカーまたは生化学的マーカーについての分析によってそのリスクがあることが決定された個体が挙げられる。PDのリスクについての遺伝的マーカーとしては、α−シヌクレイン、またはParkin、UCHLI、LRRK2、およびCYP2D6遺伝子の中での突然変異、特に、α−シヌクレイン遺伝子の30位および53位での突然変異が挙げられる。PDのリスクについての別の遺伝的マーカーとしては、レベル、またはSNCA用量、または転写を測定することが含まれる。現在パーキンソン病に罹患している個体は、静止時振戦、筋硬直、運動緩徐、および姿勢の不安定を含む、その臨床的な発現によって認定することができる。]
[0128] いくつかの方法では、患者には、レヴィー小体を特徴とする疾患以外の任意のアミロイドーシス疾患についての臨床症状がないか、またはそのリスク因子がない。いくつかの方法では、患者は、細胞外アミロイド沈着を特徴とする任意の疾患についての臨床症状またはリスク因子がない。]
[0129] いくつかの方法では、患者は、ガンおよび/またはアルツハイマー病と診断されていない。]
[0130] 処置には、典型的には、長期にわたる複数回の投与が必然的に伴う。処置は、処置されている疾患の徴候または症状を、処置の開始前のベースラインの測定値と比較してアッセイすることによってモニターすることができる。いくつかの方法では、薬剤の投与によって、凝集したα−シヌクレインの細胞内レベルの低下が生じる。いくつかの方法では、薬剤の投与により、リン酸化されたシヌクレインのレベルの低下が生じる。いくつかの方法では、薬剤の投与により、LBDの臨床症状(例えば、パーキンソン病の場合には、運動機能または認識機能)の改善が生じる。]
[0131] 予防的な用途においては、薬学的組成物または医薬品は、疾患(その疾患の生理学的症状、生化学的症状、組織学的症状、および/または行動的症状、その合併症、ならびに、その疾患の発症の際に現れる介在する病理学的表現形を含む)のリスクをなくすかもしくは下げる、重篤度を低下させる、または発症を遅らせるために十分な、組成物または医薬品の投与量および投与頻度を含むレジュメにおいて、LBDに罹患しやすいかまたは別の意味でLBDのリスクがある患者に投与される。治療的な用途においては、組成物または医薬品は、その合併症とその疾患の発症の際に介在する病理学的表現形を含む疾患の症状(生理学的症状、生化学的症状、組織学的症状、および/または行動的症状)を治癒させるか、あるいは少なくとも部分的に停止させるために十分な、組成物の投与量および投与頻度を含むレジュメにおいて、そのような疾患に罹患していることが疑われるかまたはそのような疾患にすでに罹患している患者に投与される。治療的または予防的処置を行うために適している量は、治療有効量または予防有効量として定義される。治療的処置または予防的処置を行うために適している量と投与頻度の組み合わせは、治療的に有効なレジュメまたは予防的に有効なレジュメとして定義される。]
[0132] 上記の症状の処置についての本発明の組成物の有効量は、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態、患者がヒトであるかまたは動物であるか、投与されている他の医薬品、および処置が予防的であるかまたは治療的であるかを含む、多くの様々な要因に依存して変化する。通常は、患者はヒトであるが、トランスジェニック哺乳動物を含むヒト以外の哺乳動物もまた処置することができる。投与量は、安全性および効力を最適化するために滴定される必要がある。]
[0133] 投与量と投与頻度は、処置が予防的であるかまたは治療的であるかに応じて変わり得る。指針は、他の適応症について現在承認されているか、臨床試験の段階にある、キナーゼ阻害剤の投与スケジュールから得ることができる。0.1mg〜1000mg、好ましくは、10mg〜500mgの範囲の投与量が使用され得る。投与頻度(例えば、1日1回、1週間に1回、または1カ月に1回)は、薬物の半減期に依存する。予防的用途においては、比較的低用量が、長期にわたり比較的低頻度で間隔をあけて投与される。一部の患者には、彼らの生涯の残りの期間を通じて、処置が投与され続ける。治療的用途においては、時には、比較的短い間隔での比較的高用量が、疾患の進行が低下するか終わるまで、好ましくは、患者がその疾患の症状の部分的もしくは完全な軽減を示すまで、必要である。その後、患者には、予防的レジュメを投与することができる。]
[0134] 治療薬は、予防的および/または治療的処置のために、非経口、局所、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、鼻内、または筋肉内での手段によって投与することができる。いくつかの方法では、薬剤は、沈着物が蓄積する特定の組織に直接注入(例えば、頭蓋内注射)される。いくつかの方法では、薬剤は、徐放組成物、またはMedipad(商標)デバイスのようなデバイスとして投与される。血液脳関門を十分に通過する低分子は、通常は、経口投与されるが、これはまた、静脈内投与することもできる。]
[0135] 本発明の薬剤は、状況に応じて、LBDの処置に少なくとも部分的に有効である他の薬剤と組み合わせて投与することができる。本発明の薬剤はまた、血液−脳関門を越える本発明の薬剤の移動を増大させる他の薬剤と組み合わせて投与することもできる。]
权利要求:

請求項1
α−シヌクレインを発現する哺乳動物細胞においてα−シヌクレインのリン酸化を減少させる薬剤を同定する方法であって:a)PLK2を発現する細胞中でのPLK2の活性を低下させる;およびb)PLK1を発現する細胞中でのPLK1の活性を低下させないか、もしくはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK1の活性を低下させる;および/または、c)PLK3を発現する細胞中でのPLK3の活性を低下させないか、もしくはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK3の活性を低下させる;および/またはd)PLK4を発現する細胞中でのPLK4の活性を低下させないか、もしくはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK4の活性を低下させる薬剤を選択する工程を含む、方法。
請求項2
前記細胞がα−シヌクレインを過剰発現する哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
請求項3
a)PLK2を発現する細胞中でのPLK2の活性を低下させる;b)PLK1を発現する細胞中でのPLK1の活性を低下させないか、もしくはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK1の活性を低下させる;c)PLK3を発現する細胞中でのPLK3の活性を低下させないか、もしくはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK3の活性を低下させる;およびd)PLK4を発現する細胞中でのPLK4の活性を低下させないか、もしくはPLK2についてのEC50よりも高いEC50でPLK4の活性を低下させる薬剤を選択する工程を含む、請求項1に記載の方法。
請求項4
シンフィリンの存在下でPLK2を調節する薬剤を同定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
請求項5
パーキンソン病の処置のための薬剤を同定する方法であって、該方法は、請求項1に記載の方法にしたがって薬剤を選択する工程を含み、該選択した薬剤が、その疾患の動物モデルにおいてレヴィー小体病の処置に有用な活性を示すかどうかを決定する工程をさらに含む、方法。
請求項6
パーキンソン病の処置のための薬剤を同定する方法であって、該方法は、請求項1に記載の方法にしたがって薬剤を選択する工程を含み、該選択した薬剤が、その疾患の細胞モデルにおいてレヴィー小体病の処置に有用な活性を示すかどうかを決定するさらに工程を含む、方法。
請求項7
前記疾患の細胞モデルが、神経系統に由来する細胞培養物である、請求項6に記載の方法。
請求項8
前記疾患の細胞モデルが、α−シヌクレインを過剰発現する哺乳動物細胞である、請求項7に記載の方法。
請求項9
前記活性が、セリン−129でリン酸化された全α−シヌクレインの割合の低下である、請求項7に記載の方法。
請求項10
前記活性が、前記細胞中のα−シヌクレインの凝集の減少である、請求項7に記載の方法。
請求項11
哺乳動物細胞中でのα−シヌクレインのリン酸化を阻害するための方法であって、α−シヌクレインのリン酸化が減少するように、該細胞を、該細胞中のpolo様キナーゼ2(PLK2)の活性を低下させる薬剤と接触させる工程を含み、ここでは、該薬剤は、存在する場合にはPLK1活性、PLK2活性、またはPLK3活性の低下と比較して、PLK2活性を優先的に低下させる、方法。
請求項12
前記薬剤が前記PLK2タンパク質の発現を低下させる、請求項11に記載の方法。
請求項13
前記細胞が神経細胞(neuronalcell)である、請求項11に記載の方法。
請求項14
前記薬剤が合成化合物である、請求項11に記載の方法。
請求項15
前記薬剤が4000未満の分子量を持つ、請求項14に記載の方法。
請求項16
前記薬剤が、PLK2RNA転写物の発現または翻訳を阻害するポリヌクレオチドである、請求項14に記載の方法。
請求項17
前記薬剤が、二本鎖領域を含むsiRNAである、請求項16に記載の方法。
請求項18
前記二本鎖領域の一方の鎖がPLK2転写物に完全に相補的であり、PLK1転写物またはPLK3転写物に対する完全な相補性は持たない、請求項17に記載の方法。
請求項19
シヌクレインのリン酸化が減少するように、細胞中のpolo様キナーゼ2(PLK2)活性を低下させる工程を含む、哺乳動物細胞中でのα−シヌクレインのリン酸化を阻害するための方法。
請求項20
PLK2活性を阻害する薬剤の治療有効量を投与する工程を含む、パーキンソン病と診断された患者を処置する方法。
請求項21
前記薬剤が、PLK1活性またはPLK3活性の阻害と比較して、PLK2活性を優先的に阻害する、請求項20に記載の方法。
請求項22
前記薬剤が、PLK1活性およびPLK3活性の両方の阻害と比較して、PLK2活性を優先的に阻害する、請求項11に記載の方法。
請求項23
前記薬剤がsiRNAである、請求項22に記載の方法。
請求項24
前記薬剤が、二本鎖領域を含むsiRNAである、請求項23に記載の方法。
請求項25
前記二本鎖領域の一方の鎖がPLK2転写物に完全に相補的であり、PLK1転写物またはPLK3転写物に対する完全な相補性は持たない、請求項24に記載の方法。
請求項26
前記薬剤が、4000未満の分子量を持つ合成化合物である、請求項20に記載の方法。
請求項27
前記患者が、ガンと診断されていないかまたはガンの処置を受けていない、請求項20に記載の方法。
請求項28
前記患者が、アルツハイマー病と診断されていないかまたはアルツハイマー病の処置を受けていない、請求項20に記載の方法。
类似技术:
公开号 | 公开日 | 专利标题
US10337015B2|2019-07-02|Modulation of pre-MRNA using splice modulating oligonucleotides as therapeutic agents in the treatment of disease
Ninkovic et al.2010|The transcription factor Pax6 regulates survival of dopaminergic olfactory bulb neurons via crystallin αA
Li et al.2007|The neuregulin-1 receptor erbB4 controls glutamatergic synapse maturation and plasticity
Huot et al.2012|The Sam68 STAR RNA-binding protein regulates mTOR alternative splicing during adipogenesis
Lu et al.2013|Identification of NUB1 as a suppressor of mutant Huntingtin toxicity via enhanced protein clearance
ES2343318T3|2010-07-28|Administracion de arnsis.
US7294504B1|2007-11-13|Methods and compositions for DNA mediated gene silencing
US10238681B2|2019-03-26|Micro-RNAs and compositions comprising same for the treatment and diagnosis of serotonin-, adrenalin-, noradrenalin-, glutamate-, and corticotropin-releasing hormone-associated medical conditions
Tagawa et al.2007|The induction levels of heat shock protein 70 differentiate the vulnerabilities to mutant huntingtin among neuronal subtypes
Head et al.2000|Small heat shock proteins, the cytoskeleton, and inclusion body formation
Lasek et al.2007|Downregulation of mu opioid receptor by RNA interference in the ventral tegmental area reduces ethanol consumption in mice
Ghosh et al.2011|Nuclear factor-κB contributes to neuron-dependent induction of glutamate transporter-1 expression in astrocytes
Shafey et al.2005|Hypomorphic Smn knockdown C2C12 myoblasts reveal intrinsic defects in myoblast fusion and myotube morphology
US9274128B2|2016-03-01|Transcriptional repression leading to parkinson's disease
Lawrence et al.2012|The nuclear protein Sam68 is cleaved by the FMDV 3C protease redistributing Sam68 to the cytoplasm during FMDV infection of host cells
US9084813B2|2015-07-21|Agents that reduce neuronal overexcitation
Chen et al.2010|CDKL5, a protein associated with rett syndrome, regulates neuronal morphogenesis via Rac1 signaling
CA2525976A1|2003-12-04|Modulation of ptp1b signal transduction by rna interference
Feng et al.2010|A multifunctional lentiviral-based gene knockdown with concurrent rescue that controls for off-target effects of RNAi
Valenzuela et al.2010|Location of prorenin receptors in primate substantia nigra: effects on dopaminergic cell death
US8383602B2|2013-02-26|Use of TRIM72 as a target for muscle and heart enhancer
ES2566553T3|2016-04-13|ARNnp U7 modificados para el tratamiento de las enfermedades neuromusculares
US20050014264A1|2005-01-20|Method of introducing siRNA into adipocytes
US10815476B2|2020-10-27|Methods and compositions for synthetic RNA endonucleases
US20070238682A1|2007-10-11|Heat shock rna and its use in activation of heat shock transcription factor and treatment of cancer, inflammation, ischemia, neurodegeneration, age-related diseases, hiv infection, deafness, and related disorders
同族专利:
公开号 | 公开日
US20110207796A1|2011-08-25|
WO2009103010A2|2009-08-20|
WO2009103010A3|2009-11-05|
CA2713753A1|2009-08-20|
EP2247748A2|2010-11-10|
引用文献:
公开号 | 申请日 | 公开日 | 申请人 | 专利标题
法律状态:
2012-01-21| A521| Written amendment|Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20120120 |
2012-01-21| A621| Written request for application examination|Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20120120 |
2013-05-27| A072| Dismissal of procedure [no reply to invitation to correct request for examination]|Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A073 Effective date: 20130524 |
2013-06-04| A300| Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed|Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20130604 |
优先权:
申请号 | 申请日 | 专利标题
[返回顶部]